木材の化学修飾.表面加工や金属めっき
薬学雑誌1899年.p581,p689.明治32年,
現代の生活はプラスチック無しでは考えられないが,昔,生活用品の多くは木でできていた.学校の教室や台所を思い出すだけで明らかである.ましてや,100年前,多くの製品は江戸時代同様,木製だった.
木は、都会でも裏山でも物置でも簡単に手に入り,軽くて加工も容易である.昔の化学者は,将来プラスチック時代がくることなど夢にも思わず,この優れた材料である木材の価値をさらに高めるため化学修飾を考え始めた。もちろん明治の薬学者の興味あるところでもあった.
まず,電気鍍金(メッキ)が試みられた.
木を硫酸銅に浸して乾燥後,硫化水素ガス処理で不溶性硫化銅の皮膜を作る.之を銅線で摩擦,次に電流の“積極板”として食塩水中にて電流を流す.銅塩を還元させたあと,通常の銅溶液にて任意の厚さになるまで銅を沈着せしむれば,さらに銀などを塗布することも容易という(曲渕,最新外国文献紹介).
(積極板というのは、陽極ということか)
防水,防火,耐腐食性などを付加した機能性木材を目指したのだろうか.
いや,単に派手なハイカラさが欲しかったのではあるまいか.なぜなら薬学雑誌には「鉱輝ある木材」の研究報告もあるからだ.
90℃濃厚ソーダ液に4日,硫水化Ca液1日,50℃硫黄飽和カリ液に2日漬け,乾燥,鋳鉄で磨くと光るという.
「若し鉛,亜鉛,錫片を以って研磨すればその光沢さらに較著なり.後に之をガラス或いは陶製磨石で研磨すれば光輝燦然,鉱鏡の如し」(高橋,最新外国文献紹介).
土や森ばかりの自然が豊富だった時代は,仏像や工芸品に見られるように,とにかくピカピカしたものが美しかったのだろう.今は安っぽいプラスチックも,昔は確かにスマートで高級なイメージがあった.
ちなみに樟脳とニトロセルロースからできるセルロイドは1869に発明されたが,まだまだマイナー材料だった。最初の本格的プラスチック,フェノール樹脂のベークライトは1909年に発明された。
これらがなければ、さまざまな「高機能木材」を使った製品ができたことだろう。
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