2020年2月11日火曜日

サクラ保護樹木とプロの植木職人

2月7日(金)
昨日から今期最強の寒波が入り、今朝はマイナス2度、この冬初めて氷が張った。
8:40植木職人さんが3人到着。

8:53
桜は大きく切ると枯れてしまう。
特にこの太さ(周囲3.4メートル)になると、幹を最低限生かすだけでもかなりの葉っぱが必要だから、下手に切れない。
2011年11月以来、少し切っては下の枝を育て、だんだん低くしてきた。二階の屋根をすっぽり覆っていた巨木も8年でここまで低くなる。

しかし、昨年の台風15号は怖かった。
桜が倒れたら家がつぶれる。夜中、暴風の音で熟睡できなかった。
一年一刻でも早く桜を低くしなければならない。
8:56  右はファーブル昆虫館
そこで老木枯死のリスクはあるが、思い切って大枝(幹)を切ることにした。
幹の途中で切ると残った部分が葉っぱの不足(栄養不足)で枯れてしまうだろう。
だから大胆に枝分かれのところから切る。

この木は文京区保護樹木になっている。
2013年は剪定費用の半額を援助してくれたのだが、翌年は予算がなくなったといって援助なし、次の年からは剪定費用は3年に一回になってしまう。
さらに数年前から道路にはみ出た部分は自己責任、敷地内部分(7割)だけを支給するとなった。
つまり、かつては50%だったのが、現在は
0.5x0.33x0.7=0.11
すなわち、10万ずつ10年、剪定に100万かかっても、総額の11%、11万円しか援助してもらえなくなった。

しかし1割援助でも大きいから担当者に連絡、見積書を送り剪定内容を伝えた。
すると電話がかかってきた。
指定保護樹木は樹形を変えてはいけない、毎年伸びた部分を切るだけにしてほしいという。
そう言われるなら、台風で倒れ家が壊れたら保険で補償してくれるのか?
枯れかけている枝が落下して人に当たってけがをしたらどうするのか?
補償はできないということで担当者のトーンは弱くなったが、なかなか許可しない。
そのうち、こちらも文化人の旧宅や街並み、樹木の保存に無関心な文京区に対する不満をぶつけ始め(彼の責任ではないのだが)、平行線となる。もうこちらも保護樹木指定解除でもいい、と譲らなかったら向こうはようやく剪定を許可した。

9:10
ここは道が狭くて高所作業車が入れない。
だから一番最初のとき足場を組んで4人で作業するといって80万円の見積もりを出した業者がいたが、どんな高くても登って切る芳樹園さんをみつけ、以来そこに頼んでいる。

彼らは実にプロフェッショナルである。
まず木を見上げ作戦を立てる。どこにはしごをかけるか、どの順番で、どちらの方向から切っていくか。
高辻さんはいつも同業者の福地さんをヘルプで連れてこられる。彼が信頼する相棒と相談しながら決めていく様子は興味深く、いつも仕事を休んで見物している。

そして登れば両足をはしごに絡め脚力だけで全身を支持し、強靭な腹筋で上体、両腕を自由に使う。柔軟さと筋力で、時には不安定な形になりながらも幹と格闘する。
怪我したら即失業するのに、作業は危険極まりない。
だから大胆かつ慎重、はしごは必ず幹にしっかり縛り付け、ぐらつかないようにする。

山茶花、金木犀も頼んであるが、体力あるうちに大物をやりたいと最初に3人がかかりで桜に取り掛かられた。

幹の半身が枯れていた下の太い枝は、上の大枝にはしご、ロープをかけられたので簡単に落とした。

そしていよいよ本丸に取り掛かる。
細い枝をすべて落とし幹を裸にした後、上から輪切りにして少しずつ切っていく。
正月の出初式の曲芸的はしご技は、あまり実用的でない危険な格好をするためだけの演技で、しかも演技者の怖さが見えてしまう。
しかし植木屋さんたちは全く普通の様子で、もっと高度な作業をしている。
アマとプロの違いだろう。

9:55
あるところまで落として来たら、二つのはしごを適切な位置にかけられなくなった。すると丸太を車から降ろしてきて、3人がのぼり、作業に必要な足場を作り始めた。

出来上がると「一本いきます」と煙草を吸われ始めたので慌ててお茶の準備。
庭の野菜を眺めながら休憩。

福地さんは昨日、根津神社の大イチョウの剪定にヘルプで行っていたとのこと。
斜面の上のほうの20メートルの木だったから高所作業車も使えず、強風にあおられ怖かったらしい。この日は今季一番の寒さだったが、風がないため体力の消耗がないから楽だという。

都心ではだんだん大きな家がなくなって、庭木のない小さな家になっていくという話から、近所でも高村邸の消失や西日暮里のマンション建設、はては中国マネーによる不動産買い占め、相続問題などに話題は尽きない。
10:32 作業再開

これだけ太いと少しずつ輪切りにしても相当な重量となり、落とせば道路を傷めたり、ブロック塀を破壊したりする(数年前一度あった)。
そこでロープを幹の先に縛り付け、はしごの上端に引っ掛ける。そして二人が上空で作業、残った一人が地上でロープを引っ張り、落下を防ぐ。

高辻さんが幹をかかえ、福地さんがチェーンソウで少しずつ輪切りにする。音もすごいが、顔のすぐそばでチェーンソウが回るのだから少しよろめいて手元が狂えば大けがする。
のこぎりくずが飛び散り顔面に吹き付けるから3人とも覆面、防護眼鏡をしている。風がなくてよかったというのは、のこぎりくずが近所の家々に散乱しにくいということもある。
11:42
こうやって少しずつ切っていくのだが、とても持てないから数十キロはあるのではなかろうか。
一つ椅子にぴったりのものがあり、記念に残したかったが、重すぎて室内では邪魔になるだろう。外に置いたらアリ、シロアリの巣となるから諦めた。

軽トラ2台で来たが、全部は積み切れず。

作業が終わり白菜と大根を3人にもっていってもらった。

白菜は白い部分があまりなく、鍋にしてもおいしくないのだが、前回福地さんがうまかったと言ってくれた。高辻さんが全幅の信頼を置き、大物を切るときは必ずヘルプに頼む彼は、ちょっとぶっきらぼうで怖そうだったが、その白菜いらい、私は彼のファンになっている。
2020-02-08 7:25
大きくあいた切り口から枯れなければよいが。


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