2026-03-11
7番畝、第二次大根にトウがたってきた。
ダイソーで種を買った宮重総太り大根は、第一次9本、第二次8本。第三次は紅三太2本、トウ立ちの遅い三太郎を8本、合計27本。
人にあげても消費しきれない。
大根はトウ立ちから1週間くらいすると外皮のすぐ内側で輪状にめぐる網目状の筋(すじ)が太く硬くなる。ヘチマの網のようになって口に残り、可食部が減るだけでなく料理が面倒になる。
そこで例年この時期になると庭から抜いて冷蔵庫に入れたり、土に埋めたりして成長を止めてきた。
庭のほかのアブラナ科もトウ立ち真っ盛り。
2026-03-16
トウ立ちに続いて花が咲く。
もちろんこれは観賞用ではなく食べるために育てたものだが。
迷わず廃棄処分。
菜の花の美しさは、本体よりも周りの景色が大事ということがわかる。
専門語としては抽苔(ちゅうだい)という言葉がある。(苔はコケではなく薹の代わりの字で、花の付く茎を表す)。
ネットを見ればどのサイトも抽苔は「トウ立ち」という現象を表すようだが、日本語では後ろの苔が中心となるため、伸びた薹すなわち「トウ」を表す言葉だと思う。
また、バーナリゼーション(Vernalization)という言葉もある。
verはラテン語の春だからそのまま訳して「春化」というが、「春になっておこる植物の変化」という意味ではない。(変化するのは当り前で広範にわたるから言葉は作れない)。
バーナリゼーションとは低温処理、あるいはその結果起こる現象(トウ立ち)のことを言う。
2026-03-16
カブのトウ立ち
カブは大根と同じアブラナ科でも、属がちがう。
ダイコン属ではなくキャベツ、小松菜と同じアブラナ属である。
しかしトウ立ちすると大根とそっくりの場所にそっくりな網目状の筋が出てくる。
白菜、大根など秋冬作物の多くは葉物野菜だから春になってトウが立って花が咲く現象は、生産者にとっては厄介者でしかない。しかし、秋にまく冬小麦はバーナリゼーションがなければ結実しない。
バーナリゼーションはソ連の1920年代から30年代にかけて活躍した農学者ルイセンコが発見した。
冬小麦は冬が厳しすぎると枯れてしまう。かといって春まき小麦(別種)は収量が少ない。そこで人々は冬小麦を春にまいたが、育つばかりで実がならなかった。
ところが彼は種を(冬を経験させたような)低温処理すると春にまいても結実することを発見した。
だからバーナリゼーション(春化)は春の状態にする変化というより、秋冬品種を春品種に変えるという意味の言葉だったのかもしれない。
(そして彼は温度という環境が品種を変える、すなわち獲得形質の遺伝という結論に至った。まだDNAが遺伝子だと知られていなかった時代である)。
2026-03-16
3番畝、紅三太もトウ立ち。
ネット内にある三太郎8本はまだトウ立ちしない。
生物には個体の成長と子孫を残す複製という二つの機能がある。
これらは同時にできない。植物なら、葉っぱ、茎の増量と、続く開花、結実という二つの現象のことだ。
動けない植物の場合、これらは季節にリンクせざるを得ない。秋に発芽、成長した植物は冬の間、低温のため成長が鈍化する。そして春になって成長を再開するが今度は開花、結実に専念する。
この切り替えが低温である。一過性の低温がないと開花に向けたスイッチが入らない。
これは植物が進化の末に獲得した生存戦略である。
この仕組みは近年、分子的にかなり良くわかってきた。
多くの植物は、はじめは個体成長に専念させるため、FLC(Flowering Locus C)遺伝子産物が開花を抑制している。それが低温にあうとFLCの働き(ブレーキ)がなくなる。エピジェネティクス、すなわち環境の遺伝子発現に対する作用である。するとそれまでFLCによって抑えられていたFT遺伝子(Flowering locus T)が動き出す。
昔から、葉が春になって日照時間や温度などを感じて開花へのスイッチを入れる物質としてフロリゲン(花成ホルモン)というものが想定されてきたが、2000年代に入り、FT遺伝子の産物こそがフロリゲンだと分かった。
ちなみに現在、冬小麦と春小麦の違いは、主に開花抑制遺伝子(FLC)とFLC抑制遺伝子(VRN1, VRN2 など)のプロモーター領域の変異によるものだと判明している。
2026-03-16
2026-03-16
4番畝 白菜も花芽がでてきた。
千駄木菜園でこれが大きく関わっているのがキャベツである。
最初に種をまいたのは2016年5月。ダイソーで買った2袋100円の種である。順調に生育したが無残なまでにコナガにやられ、収穫まで至らなかった。
そこで、以後、同じ種を虫の少なくなる秋にまくことにした。越冬させ翌年5~6月に収穫するのである。
このとき早くまくと、バーナリゼーションで春先にトウが立ってキャベツにならない。
そこで本葉数枚の幼い苗で越冬させる。すると春になってもトウが立たず、温度が上がることで葉の成長が進み、この間全くトウ立ちはない。
これはどういうことかというと
幼若段階では、FLC遺伝子に対する低温依存的なエピジェネティック抑制(ヒストン修飾)が十分に確立・維持されない。そのため、低温によって一時的に発現が低下(ブレーキ解除)しても、温度上昇後にFLC発現(ブレーキ)は再び回復してしまう。
また、FLCブレーキをはずすVRN1, VRN2, VIN3 といった春化関連遺伝子はある程度成長していないと発現しない。
いっぽう、成長して越冬すると、ブレーキをはずす春化関連遺伝子が低温によって発現し、FLCというブレーキがはずれる。具体的にはFLCが巻き付いているヒストンをメチル化し、FLC(=ブレーキ)を永続的に働かなくする。
今年は10年目にして初めて種が発芽しなかった。
何が悪かったか分からず、もちろんダイソーに文句を言うわけにもいかない。
キャベツ用に使う予定だった6番畝がそっくり空いてしまった。そこで同時に気まぐれで種まきしていたロマネスコとのらぼう菜の苗を植えた。
2026-03-16
6番畝 ノラボウナとロマネスコ
キャベツとロマネスコは生物種としては同一(Brassica oleracea )である。
冬に入るとき苗は非常に小さく、キャベツならばバーナリゼーションは起きない大きさだった。しかしキャベツと違ってロマネスコは、ブロッコリー、カリフラワー(これらもキャベツと同一種)と同様、最初から花芽(頂花蕾)が出てくる栽培品種なのである。
トウ立ちなどの心配はまったくなく、むしろ期待して楽しみにしていた。
2026-03-16
ロマネスコの抽苔。
しかしロマネスコとは全く異なる花茎が出て、見たこともない植物になった。
通常のロマネスコと違う大きさで冬を越したせいで遺伝子の発現が狂ったのだろうか?
あるいはF1という商品作物から自家採種のF2になってロマネスコの性質が消えてしまったのか?
あるいは昨年まわりのキャベツ類(同じ生物種)と交配してしまったか?
野菜つくりは奥が深い。
この近所は相続があると敷地が分割され庭がなくなっていく。
まだ庭がのこっている家も植木や花を植えている。しかしパンジーや菊、梅、桜は、花が咲いている時だけ見られ、植物全体を1年じゅう見ている人はあまりいない。
野菜を何度も(毎年)作り、何ごとかを考えないと、こうした変化の後ろにある植物の進化とか生存戦略に思いが向かわないものだ。
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20230311 暖かくて冬野菜トウ立ち、キャベツ定植


















































