2007年の田辺と三菱ウェルファーマの合併以降、研究部門については
2015年2月、かずさ事業所を2016年3月に閉鎖、戸田と横浜に統合すると発表。
しかし、
2018年11月、2023年度に向けて、国内に2つある研究拠点(戸田、横浜)を1つにすると発表した。
ゆくゆくは戸田は横浜青葉区、旧三菱化成の事業所に統合されるだろうと思っていたから驚かなかった。それ以前から戸田の研究員の一部は横浜に移転し始めており、今年2019年2月に戸田を訪ねた時も、人がいない研究室が多く、がらんとしていた(→別ブログ)。
ところが半年もたたない今年4月、2023年ではなく2019年中に戸田を閉鎖すると発表。
250名の研究員は5月から順次、武田の湘南アイパークに移ることになった。
https://www.mt-pharma.co.jp/release/nr/2019/pdf/MTPC190411.pdf
そんななか、戸田の旧友、T氏からメールが来た。
移転作業が本格化し、図書室は閉鎖、本をほとんどすべて廃棄、希望者にあげるという。
欲しい欲しいというと、上司の許可も取ってくれ、
7月10日、朝9:00訪問。
T氏のほかに、G女史、K氏も出迎えてくれた。
K氏は出身やエピソードはよく覚えているのだが、名前だけが出てこず、焦った。
7年ぶりに入る図書室。
数年前から大阪加島事業所に本を移管して、だいぶ少なくなったというが、まだまだ多い。私のいる薬科大より質、量ともにはるかに優れている。
社内報の棚以外すべて持って行っていいという。
東大はじめほとんどの大学図書館にない「国際医薬品情報」が欲しかったのだが、2003年以降のものしかなかった。それ以前のものは処分したという。本は場所をとる。
「化学と工業」。
日本化学会の学会誌だが、薬学会のファルマシアより面白く、入社して20代のころ図書室でよく読んだな。
スモン関連の図書。
こういうものは入手が難しいから廃棄せずに保管すべきではなかろうか。
田辺の研究者たちがサイエンスの点で譲らず、裁判が長引いた事件である。田辺はキノホルムが原因だとは最後まで(今でも)認めなかった。
患者の救済は別問題であり、科学者たるものはこうあるべきではないか?
研究員の学位論文もすべて捨てるらしい。
Natureは173巻(1954)から、Scienceは118巻(1953)からすべて揃っていた。
Lancetも1953年(264巻)から。
この年は田辺にとって何かあったのだろうか?
なお研究所が世田谷から戸田に来たのは1960である。
Advance in Carbohydrate Chemistry は第1巻1945年からあった。
それにしても捨てるなんてもったいない。
しかしネットで読めるとなると場所を確保して保管しても誰も見ない。
ましてや事業所が統合されるなら重複もあるだろからますます不要である。
仕方がないのだろうか?
でも当時の人々は、これらを購入するのに相当大金を払ったはずだ。それでも海外の情報が欲しかった。そしてネット時代になる前、つい最近まで先輩たちはプロとして熱心な人ほどこれらのページを夜遅くまでめくり、ノートに筆写した。
こうした書籍を捨てることは、彼らの払った努力、情熱までも一緒に廃棄処分してしまう気がする。
せめて写真でも撮るか。
JCS すなわちJournal of the Chemical Society は1927年(昭和2年)から揃っている。
私の博士論文のもとになった研究を投稿したBritish J. Pharmacolは1946年からあった。当時はBritish J Pharmacology and Chemothrapyという誌名だった。
JACSは1918年からある。
大正7年だから震災前、第一次世界大戦が終わった年だ。
保存状態も良い。
当時は構造式に二重結合が書いてない。
JACSを初めて見たのは修士課程にいた1980年ころ。当時はすでに他の雑誌よりも大型であったが、1918年はA5判、小さい。
「医学の歩み」は紙が貴重だった昭和21年からある。
本を選び終わると11時を過ぎていた。
宅急便をすすめられたけど、リックと手提げ袋で電車にのって大学に持ってきた。
この日もらったのは左から
1. 科学 vol.12(1942)-16(1946) 岩波書店
2. 化学 vol.18(1963) 化学同人
3. 生体の科学 vol3, vol.4 (1951-1953) 医学書院
4. 薬学雑誌 191-202(1898)明治31年
5. 医学の歩み 第2巻(1946)日本医学雑誌株式会社
6. パッチクランプ実験法 岡田泰伸編(1996)吉岡書店
7. 明薬今昔史 1978 明治薬科大学75周年
8. 長井長義伝 金尾清造 1960 日本薬学会
9. 東京薬科大百年 写真集 1980
10.外国人の姓名 島村修治 1971 帝国地方行政学会(株)
(2019-08-22 追記)
8/21再び訪問、またもらってきた。
1.化学と生物 第1巻 昭和37.11~38.12 農芸化学会の機関誌
2.薬学雑誌 明治32年
3.有機合成化学協会誌 第1,2巻 昭和18-19年
4.Science 1953
5.Nature 1954
Natureなどの背表紙には G.TANABE&Co と打ってある。
田辺五兵衛商店である。
田辺製薬への社名変更は1943年であったが。
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