2019年7月21日日曜日

開成の校舎解体と高校入試

開成が校舎を解体した。
西日暮里駅からすぐの正門入って右側、ひぐらし坂に面した鉄筋コンクリート3階建て。
入試の合格番号が貼られ、剣道の掛け声が聞こえていた体育館校舎(1971年築)。

4月だったか5月だったか、フェンスで覆われ工事が始まり、フェンスが撤去されるとアスベスト入りの建物は消えていた。

なぜ建て替えるのだろう?
2019-07-17

真っ先に思ったのは、巣鴨、本郷など、盛んに行われた都内私立中学の校舎新築であった。
学生数が増えるわけでもないのに建て替えた。
中の先生に理由を聞くと、入学者確保のためという。
少子化で生徒数が減る中、いかに選んでもらうか。
見学に来る小学生の母親が大事だそうで、それには教育理念などより、きれいな校舎ということだ。
中堅校の苦しさは分かるが、開成などトップは関係ないのではなかろうか?
ぼろ校舎の方がカッコいいではないか、と思ったが、一つ思い当たる節がある。

中高一貫校の高校入試の不人気である。
本郷学園は高校入試を2022年から中止するらしい。
高校から入る学生の大学受験成績が極端に悪いためである。
学内の中高一貫生と比較しても悪いが、同じ偏差値の他の高校よりも低いのである。これは中高一貫の教育がメインのため、途中から合流する生徒の指導ノウハウが不十分なためと説明される。
生徒の方でも避ける傾向が強い。途中から入っても生徒会やクラブでは中学からの一貫生のものが中心になり、面白くないというのだ。
志願者は公立を第一志望としており、合格しても、辞退者が続出、ますます一貫生との差は広がる。

これは開成でも同じではないか。
高校入試で入る100人は、1年間進度調整で別クラスだが、もともと優秀だから高2から中学からの300人と完全に混ぜ7x7の49人8クラス、高3での運動会目指して密度濃く一緒に学んでいく。

ところが近年、高校入試の人気が落ち、2004年は正規合格162人、繰り上げ数人、つまり合格辞退者が70人程度だったのが、2019年は正規合格188人、繰り上げ入れれば250人くらい合格通知を出したと言われる。すなわち150人ほどが日比谷、西、浦和、横浜翠嵐などにいった。開成は滑り止めだ。

何となくわかる。
千葉でのふんどし水泳合宿、中1から高3までの縦割りでチームを作り上級生に指導される運動会などは中学から入らないと味わえないし、高校から入ると勉強で追いつくのに必死で遊べない。
一貫生が大きな顔で(本人たちは無意識でも)仕切っているのは不愉快だろう。たった一回の高校生活なら自分たちが主役になれる高校、中高一貫でないところがいい。

400人のうち200人(多いとき、2012年)が東大、100人が医学部に行くらしいが、進学先での優秀な同級生よりも中高での友人のほうがはるかに親しい。彼らにとって東大ブランドより開成ブランドの方が重要なのだ。中高一貫の魅力が宣伝されるほど、高校入試は苦戦するだろう。

2019年の高校入試は志願者が2016年より100人以上減っている。この流れは止められない。開成も高校入試を廃止すると見る。
すると中学の定員を400人にするだろう。
少子化、公立中高一貫などで私立中学入試は軟化していく。その流れの中で定員を増やせば、偏差値が低下するだろう。下手すると小石川など中高一貫都立などに流れるのではないか?

 
建築計画を見れば創立150周年記念事業という。
2020年1月着工、7月末に完成、地上6階、地下1階。
公式サイトをみれば、日の当たらない中庭もつぶし、体育館、食堂、教室が入るようだ。
完成予想図は何の装飾もなく、ただのビルであった。

1871年創立、えっこんな人も、というほど多くの人材を輩出した。
少々偏差値や東大合格者が減ってもいいではないか。
歴史と伝統が一番の財産である。
2019-07-17

工事前の写真をのせておく。
2017-09-23 8:46 
文化祭の開門前に並ぶ小学生と保護者

2017-06-10
西日暮里のホームからはここのペン剣マークが見えていた
 
2017-06-10


以下は2018年10月13日
おそらく内部の人は見慣れた景色として写真など撮っていないだろう。
もはや貴重なものになったのではないか?









なお、道灌山での開成校舎の変遷は別ブログに書いた( →)


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