2023年10月8日日曜日

カイガラムシ、イモムシ、カミキリムシ

  

千駄木菜園3本目の柑橘類として、2022年2月、不知火(デコポン)を植えた。
退職と同時だから2回目の夏だがまだ花は咲かない。
先日、ふと見たら白いカビのようなものが付着している。近づくとカイガラムシだった。
2023₋09₋04
画像検索するとイセリヤカイガラムシが近い。
オーストラリア原産だが、明治時代に日本に入り、かんきつ類ほか様々な樹木に寄生する。
ところが有力な天敵であるベダリアテントウの導入によって制圧されたというから違う種類だろうか?

わが国でよく見るカイガラムシは
貝殻のような殻をかぶっているヤノネカイガラムシやカタカイガラムシなど、
ロウ物質で体が覆われたルビーロウムシやツノロウムシなど、
体の表面が粉状の物質で覆われたコナカイガラムシなど
があるというが、5つとも画像を見ると庭のものと違う。
やはり、イセリヤカイガラムシのような気がする。
カイガラムシは昆虫らしくない2つの特徴がある。
1. 脚が退化してほとんど動かないこと
2.体が貝殻のようにみえる分泌物で覆われていること。

カイガラムシはアブラムシのように茎や葉に付着して篩管液を吸う。動く必要がないから脚が退化している。オスは成虫になると羽と脚が出て移動できるが、メスは動かないまま交尾、産卵、死んでいく。

篩管液は糖分に富むから、必要なアミノ酸やミネラルを摂取しようとすると、糖分を過剰に吸うことになる。そこでアブラムシ同様、体外に出す。この排泄された糖液を甘露といい蟻を集める。また、過剰の糖分は炭化水素やワックスエステル、樹脂酸類などといった、蝋質の物質に変換されて体表から分泌され、虫体被覆物となる。これが「貝殻」であり、昆虫とは思えない擬態によって外敵から身を守り、また消毒液も効かない原因となる。

動かず虫にも見えないことから触ることに抵抗がなく、駆除するのに手で剥がすことにした。動物とは思えないからつまんで潰すと橙色の汁が出た。青虫など葉食系の虫は体液が緑だが、篩管液を吸っているものは、葉緑素の影響がなくいろんな色がありうる。

ふと、カイガラムシの一種は歴史的に赤色染料の原料だったことを思い出した。合成染料が生まれる前まで赤は植物のアカネか、カイガラムシからとっていた。

2010年ころから数年間、趣味が高じて化学、薬学の歴史に関する翻訳書を数冊上梓した。
染料の製造というのは、医薬品と違い、結果が誰の目にも明らかである。決まった手順でやれば決まった結果が得られ、新しい試みをすれば、新しい結果が得られる。つまり、科学の対象となりうる。染料の製造過程は人類最初の化学実験とも考えられ、また化学工業の始まりともなった。
世界最大の化学メーカー・BASFも染料から出発している。世界最大手の製薬企業、ノバルティスの前身会社、サンド、チバ、ガイギーも染料会社であったし、世界最初のサイエンスに基づく製薬会社バイエルも染料会社であった。

「新薬誕生」「セレンディピティと近代医学」「スパイス・爆薬・医薬品」「サルファ剤・忘れられた奇跡」はいずれも染料,染料工業の話を扱っている。さらに染料について講演も何回かしているから、カイガラムシの赤色染料について私はかなり詳しい。

古代から知られる赤色染料コチニールは、カイガラムシの一種エンジムシから得られ、アステカ人が使っていた。それをスペイン人がヨーロッパに持ち帰り、爆発的に広まった。コチニールの主要成分はナフトキノン誘導体のカルミン酸である。

定年退職してから、ダンスとアルバイト(生協の野菜売り場、シェア畑の管理)だけで、すっかり知的生活から遠のいていたが、この害虫のおかげで、久しぶりに古い記憶が蘇った。
2023₋09₋21
今年初めて作った里芋。
日当たり悪く育ちが悪い。ふとみたら大きな虫がいた。
尾部に角があるから色はだいぶ違うがイモムシの仲間だろう。

今もサツマイモの葉を盛んに食っているイモムシは緑か灰茶色の2種類だが、この派手な黒字に黄の横縞は初めて見た。イモムシというのは本当に「芋」にいるのだな。
頭隠して尻隠さずの尾部を割りばしでつかんで引っ張り出した。
カイガラムシと違ってこちらは素手でつかめない。
潰すこともできず、容器に入れて太陽熱で殺すことにした。

2023₋10₋01
こちらはイチジクの木を食っていたカミキリムシの幼虫。
虫体は白くて堅い。
カミキリムシの恐ろしさは、葉を食わず幹を食うため、木を枯らしてしまうことだ。

私はイチジクに対するあこがれのようなものがあり、苗を1本買い、それがカミキリムシで枯死してから、路上に「ご自由にお持ちください」とあった鉢の2本を持ち帰り、そして昨年また1本苗を買った。つまりまで4本植え、3本育てていたことになる。

しかし今年になって拾った1本は庭が狭くて抜いてしまい、2本だけになった。そして1本が虫に食われた。
なかなか美味しい実が生るところまでいかず、あこがれは続いている。


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