2025年11月8日土曜日

アピオス・アメリカホド芋を初めて栽培

 西洋の花の名前かと思ったアピオスを知ったのは、昨年、偶然による。

リンゴや柑橘類の糖分を調べるのに文科省公式サイトから日本食品標準成分表(2023)をみていた。
ここは果実類、豆類、野菜類、などと分類されている。たまたま、その中の芋・でんぷん類をみたら、一番最初にアメリカほど芋とあった(表はアイウエオ順)。たんぱく質が他の芋よりずっと高い。これは何だろう?

ウィキペディアで「アメリカほど芋」と入れると、「アメリカホド」という項目が出てくる。
学名: Apios americana。マメ科ホドイモ属の植物。
原産は北アメリカ大陸東部で、日本には明治時代中期に導入された。
英名はpotato bean、Indian potato、ground nutなど。日本では属名であるアピオスや、単にホド(ホドイモ)ともよばれる。

アメリカほど芋ということから、ほど芋というのが古くから日本にあったのだろう。実際、
日本には在来野生種であるホドイモ (Apios fortunei) が存在するが、青森を中心に作物として栽培されているのはアメリカホドだという。

ほど芋の語源は何だろう?
真っ先に思うのは、古事記にも出てくる古語の「ホト」。女性の陰部である。転じて山間の窪んだ所の意味もあるから、谷間に生える芋から名づけられたかと思ったが、むしろ日当たりのいい林の中に自生する。

自分で栽培してみようと思った。
ネットで調べたらヤフーのフリマで種芋が売っていた。
初めてフリマのアカウントを作った。
2024₋11₋09
アピオス アメリカホド芋の種芋
ヤフー・フリマ
商品名:アピオス 種芋 10球 北海道家庭菜園
商品金額:680円

到着した商品は10玉より多かった。
買ったはいいが、植える場所を決めていないので地中に保存し、越冬。

年が明け、春が進み、4月7日。
2025‐04‐07
掘ってみるとネットの網目から芽(根?)がでている。
ネットからイモを取り出すと芽が全て引きちぎれそうなので、ハサミでネットを切った。それでも芽は取れてしまった。ネットに入れての地中保存は良くない。不織布を敷いてその上にばらばらに置いて土をかけるほうがいいかもしれない。

5番畝の横、リビングの日除けになるよう植えた。
東ブロック塀際、ヒラツカレッドとせとかの東にも2個ずつ植える。

発芽率は7~8割。
夏になった。
蔓は細い。
2025‐07‐03
紫色の花が咲いた。
観賞用にもなるらしいが、そこまで美しくはない。
植える間隔、ネットの目の大きさにもよるだろうが、日除けになるほどでもない。

同じマメ科の大豆やエンドウと違い、花が咲いてもそこに実はならない。
2025‐07‐03
デッキに沿ってアピオスを植えたが、並行する5番畝にはサツマイモを植えた。
一緒に収穫しようと思う。
さらに2か月経過。
2025₋09₋23
アピオスの茎にカメムシがびっしり付いている。
枝豆などにつくのと同じ。豆類の茎の汁は格別にうまいのだろうか?
マメ類に豊富なタンパク質あるいはその原料のアミノ酸が茎を流れているのだろうか?

アミノ酸を合成するには窒素源を必要とする。
豆類は地中の硝酸イオン(NO₃⁻)やアンモニウムイオン(NH₄⁺)だけでは足りず、根粒菌を共生させ、空気中の窒素を固定してもらっている。ほど芋の場合、窒素源の取り込み口も、産物のタンパク質の貯蔵も地中の根である。原料が茎まで上がってこなくてもよいかと思うが、タンパク質、アミノ酸の炭素部分は葉で合成されるから、アミノ酸、タンパク質本体も葉で合成され、それが根のほうまで下りてくるのだろう。
それがほかの植物より豊富だからカメムシが集まるということか。
他の植物にはまったく付かないのに、マメ科だけに集まってくる。
ちなみにタンパク質、アミノ酸は茎を「流れる」のではなく濃いほう(葉)から薄いほうに拡散してるに過ぎないのだろう。

日除けとして上のほうまで蔓を伸ばしてしまったから消毒も難しい。

10月になると山芋同様に葉が黄色くなってきた。
ほど芋は北方の植物であることが分かる。
青々しているサツマイモなどと対照的である。

収穫できる時期だが、生い茂るサツマイモが邪魔で掘れない。
2025‐11‐03
葉は黄色を通り越して枯れてしまった。
この日はサツマイモを掘る日。
この畝を担当した娘が、ほど芋もいくつか一緒に掘り出した。
翌朝、サツマイモがなくなって、私も本格的に掘った。
2025‐11‐04
ほど芋の根はサツマイモの畝を完全に横断して伸びていた。
フリマで送られてきた種芋は蔓(根?地下茎?)でつながっていて、その乾燥した蔓は太くて丈夫そうであった。しかし今掘り出した蔓は細くて弱く、引っ張るとちぎれ、「芋づる式に」とはいかなかった。

ところで「芋づる式に」とは何だろう?
ジャガイモ、サツマイモ、里芋、山芋はいずれも地中に芋はできるが、芋は株の下に固まっていて、株を引っ張ればほぼ同時にすべて出る。山芋に至っては、芋はたった一つしかない。

ほど芋の形態だけが「芋づる式に」に合うが、こんなマイナーな芋がことわざになるわけがない。おそらくサツマイモだろう。サツマイモの茎は、蔓返しなどせずに野放しにすれば、地上を這ううちにあちこちに根をおろし、それが多数の小さな芋にまで発展する。おそらく地上の茎をひっぱるとのそれら小型多数の芋がつながって取れることを指したのだろう。しかし近年の栽培品種は蔓返しをしなくても小芋はできにくくなっているから諺が死語になりつつある。
2025‐11‐05
茎すなわち株のすぐ下に大きめの親芋があり、そこから根が何本か出て、その根のところどころが肥大して芋になる。その親芋は埋めた種芋ではなさそうで、新たにできた芋のようである。

さて、根はプチプチと切れてしまうため、芋づる式とはいかない。畑を全部掘り返さなくてはならず、収穫は手間がかかった。
朝飯前の1時間を連続3日、一度サツマイモを掘った5番畝(長さ3.6m、幅1.0m)を再び最初から掘り返した。
2025‐11‐06 7:43
落花生、サツマイモなど、保存の基本は乾燥させて冷暗所だが、アピオスは小さいから乾燥させるとしわになってしまうかもしれない。

2025₋11₋07 6:43
乾燥は軽めにして、芋を根から切り離して秤量した。
芋は913グラム、根(蔓)は216グラム

この日の夕食後、一人調理した。
小さいのをいくつも洗うのが非常に面倒。
ムカゴも小さいが、あれは空中に生るから洗わなくてもよい。しかしアピオスは皮が里芋のように毛羽立っていて土を抱き込んでいるから束子で一つ一つこすらなくてはならない。
最初なので電子レンジでなく鍋で茹でた。
2025₋11₋07 22:44
楊枝が刺さるまで茹でようと思ったが、かなり早い時間に縦に割れ、楊枝を使うまでもなかった。(この後食べるときに分かったが、口に残るほどの線維が縦に無数に走っている)

ジャガイモ、サツマイモは皮まで食べてしまう私も、アピオスの皮は食べなかった。
英語名のground nutからピーナッツ様な味を期待したが、そんな味はしなかった。
豆類特有の青臭さ(もやし類の風味)が少し感じられた。

ちょっと期待しすぎだった。
洗いの面倒くささを考えると来年は作らなくてもいいかな。
いちおう種芋として、6番畝、保存用サツマイモ蔓を植えた西側、つまり端に埋めたけれども。

・・・・
これを書いているとき検索したら農水省の公式サイトに、青森県三八地域の農業普及振興室?のプレゼン資料がアップされていた。

https://www.maff.go.jp/j/seisan/gizyutu/hukyu/h_event/pdf/dream10_aomori.pdf

作付け面積は平成7年には鳥取が全国1位で100a、青森は60aの3位。それが平成16年には鳥取は栽培をやめてしまい、青森が全国の8割を占める800aの主産地となった。しかし、その後伸び悩み、というか減少し、現在は少し持ち直して700aという。青森以外は家庭菜園レベルらしい。

栽培法に関しては一つ勉強になった。すなわち、
栽培期間途中で地面にスコップを刺し、芋づる(根)を切ると、根が広がらず、芋数は減るが芋が大きくなり、また何より掘り出しが楽になるらしい。それでも栽培の手間は他の作物よりかかり、省力化対策が求められているという。

どういう会議で発表されたかは知らないが、イントロのスライドを見れば、非常に精のつく食べ物らしい。北米インディアンが他の部族と戦う前に食べたとか、青森県では「嫁入り芋」として嫁ぐ娘に母親が「体が弱ったときに掘って食べなさい」と持たせたとか、みんなで食べれば精力増強で出生率アップとか、まじめに書いてあった。

私の場合、茹でたものを一人でいっぱい食べたが、何の変化もなかった。1日の適量は3~6個というが、その何倍も食べた。
さて、洗うのが面倒なアピオス、どうやって消費しようか。まだ10分の1しか使っていない。妻は食べず、したがって調理もしてくれない。


(2025‐11‐10追記)
二回目の調理、試食。
皮をむいて食べることを前提に、洗うのは簡単にした。また加熱も簡単な電子レンジでやったせいか、すこしピーナッツ風の香ばしさが出た。これなら来年も作ろうかな。
収穫の大変さから、山芋のように肥料袋で栽培することも考えられるが、水抜きの穴から根が外に出ないか心配もある。


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