薬学昔むかし
薬学雑誌1899年度(明治32年)p901-905
今まで何人か、病室に見舞ってきた。
たいてい親戚である。
何人かは点滴を受けていた。
2010年2月、食べられなくなった父親の最後は自宅で、ほとんど血管に針がさせなくなっていた。
2017年1月、肺炎で入院した叔父は、もともとワーファリンを飲んでいたこともあり、いつも血だらけだった。
看護師は点滴バッグをセットすると、落ちる滴を数えながら注入速度を調節する。
見ていると、滴下口の先の滴はだんだん大きくなって、それが重力に耐えられなくなると落ちる。つまり水滴の大きさは、滴下口の縁と水との間に働く引力と、水滴の重さで決まるように見える。
日本薬局方では
「滴数を量るには、20℃において精製水20滴を滴下するとき、その重量が0.90~1.10gになるような器具を用いること」らしい。
濡れ易ければ滴下口の外径(縁の厚さ)、濡れにくければ内径が重要なことは容易に想像がつく。難しい式は分からないけど、濡れ易さには、器具(滴下口)の材質と溶液の表面張力(水同士の引力)が関係するだろう。
溶液の表面張力が関係するなら、薬液によって水滴の大きさは違うのだろうか。
藤本理が外国文献Pharmac. Central.17, 265, 1899を薬誌で紹介している。
「液体の滴量は如何の状況に関係あるものなりやの問題は、吾人の大に必要とするところにして、プロフェッソル・ハルナック氏は専ら之が正解に力(つと)めたり(略)」。
Harnackは、自作ビウレットから1滴1秒で落としながら100種類ほどの溶液を調べた。
蒸留水1gは13滴(1滴0.077ml)であった。しかし、新しく調製した液が古い液の滴数と大いに異なったり、さらに器具が変われば、例えば0.5%モルヒネ水溶液が、8滴から27滴まで変わるというのだ。患者に点滴するときは注意を要する、とのこと。最小滴はアルコールで、1gが42滴、最大滴は一半塩化鉄液の11滴だった。
この記事、本当だろうか?
夏休み、子供(孫)にさせたいような研究である。
さて、41年前の1977年、薬学に進学して最初の実習は分析だった。
滴定用の液を作る日だったか、先生から全体説明があった。
そこで
・薬包紙1枚は 0.3g、
・1滴は 0.05ml(50 μL)
という「目安」を教わった。
最先端を学ぼうとしているのに、最初に教わったのはこんな原始的なことであった。しかし、以後何十年も世話になる便利な数字であった。
ついでに言うと、まぶたの裏、結膜嚢に保持できる液量は 20~30 μLだが、既に約 7 μL の涙が入っている。目薬は二階から差さない限り、1滴(50 μL) で十分だ。
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