2017年10月9日月曜日

第79 胃液の強弱を調べる方法

薬学雑誌1906年度 251頁(明治39年)

近年製薬会社が開発してきた消化器系の薬といえば,抗潰瘍薬が一番であろう.
しかし、昔は胃カメラなどないから,潰瘍などは思いもよらなかっただろう。
実際、世間の消化器薬といえば胃腸薬である.
ところで,その宣伝を見るたびに思う.「胃もたれ,飲みすぎ,食べ過ぎに効く」とは,いったいどういう試験(動物,臨床)をしたのだろうか.
(古くから使われているOTC薬は試験しなくてもいいのかな?).

痛ければ胃の機嫌が悪いということで,消化を助けてやれば胃が良くなると思ったに違いない.でんぷん(米飯)を分解するタカジアスターゼはベストセラーだった.それゆえ胃液,消化の研究は大きなテーマであっただろう.

以下は平山増之助による外国文献Rep.de Pharm.1905 Nr.9 の紹介.
単純素朴であるが,そのぶん、分かりやすい優れた試験法である.

「Sahli氏の創案に係る胃液の検査法は精密と称すべからざるも,実地に用ひて価値あるものなりと曰ふ.其の法,沃度仿謨(ヨードホルム)もしくはメチレンブラウの小量を丸剤となし,之を薄きクッタペルカ紙に包み,腸線を用ひて固く結紮し,食後之を患者に服用せしむるにあり.もし胃液の作用尋常もしくは其已上なるときは,腸線を溶解するが故に,丸剤は胃中に於いて崩壊し,4時間ないし6時間の後,尿中に沃度を検出せしむ.メチレンブラウの丸剤に係るときは尿を染色す.もし胃液の力足らざるときは,全く不消物を嚥下したるときと一般固より何等の反応あることなし」.
これで全文.当時は記事が短かった.

もちろん,通常はきちんと胃液を採取して試験する.
薬誌197号685頁(1898年)では
「十分定規那篤倫液(注:0.1規定NaOHのこと)1ccは0.00365瓦(グラム)のHCl又0.009瓦の乳酸に対応す」.
乳酸は当時,胃液の成分と考えられ,エーテルで抽出してから定量した.
確かに分子量は90である.

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