2020年5月7日木曜日

ミカンと文化勲章、橘とミカン属

温州ミカンがある。
2016年11月に上尾セキチューで買った苗、2019年に初めて少し花をつけたが、実(み)は花びらが散ってしばらくすると全て落ちてしまった。

2020-05-02
今年は花がいっぱいついた。
実ができるかな~とみていたら、鳥の糞に擬態するアゲハの幼虫が。

2020-05-05
農作業(ちょっと大げさだね)していて、芳香がするので見れば満開。
昨年と違ってじっくり見れば何かに似ている。
そうだ、文化勲章。

勲章の種類(文化勲章)- 内閣府
(内閣府公式サイトから)
橘の花を図案化したものらしい。
柑橘類というくらいだから似ていて当然。

橘といえば右近のタチバナ。
昔、春の挨拶に公家たちが紫宸殿前に集まるとき、天皇が「このあいだの雉はうまかったぞ」とか言って橘の花枝を折って下賜したかもしれない。
あるいは、崩れた塀を治してくれた側近に、「ご苦労じゃった」と、左近の桜の枝を手づから渡したかもしれない。
しかし、「お上、桜の枝は折ってはなりませぬ」といわれ、それ以降、帝が折って下賜するのは右近のタチバナに決まったとか。
それから何百年。
天皇の没落、権威の失墜とともに絶えた風習であったが、文化勲章を作るとき故事に明るい勲章制定委員が復活させた・・・
・・・・というのは今考えた作り話。

しかし、あらためて調べたら、紫宸殿前の二本が候補になったというのは嘘ではなかった。
文化勲章は昭和12年に制定された。

圖案はもと櫻花に配するに曲玉の意匠であつたが、(昭和天皇が)「櫻は昔から武を表はす意味によく用ゐられてゐるから、文の方面の勲績を賞旌するには橘を用ゐたらどうか」との意味の畏き思召を拜し、恐懼した當局では更に案を練って工夫を凝らし、橘花に曲玉を配した意義深い圖案が制定されたと承る。— 井原頼明『皇室事典 増補版』(wiki)

なるほど、桜は陸軍などの意匠に多い。
(常緑樹の)橘は永劫悠久の意味を有してゐるものであり、その悠久性永遠性は文化の永久性を表現するのに最も適するものとの聖慮と拜察される。ー 同

2020-05-06
実は夏ミカンもある。
2017年3月、ザクロの大木を抜いた後に植えた。
桜の陰で日が当たらないが、今年初めてつぼみが付いた。
下のほうの枝に少しばかりだから結実は期待していない。
日が当たるよう、もう少し背が伸びなくてはならない。
ふつう、ミカンも夏ミカンも日当たり良い斜面で育っている。

ここでミカン科(Rutaceae)を整理しておく
約150属、900種もあるという。
サンショウ、キハダもこの科に入る。
2020-05-07 サンショウ
我が家では鳥が種を運んできて雑草のように生える

さて、ミカン、ユズ、レモンなど柑橘類はミカン科の中でもごく一部。その150属の中の一つ、ミカン属(Citrus)に入る。

イヨカン Citrus iyo
ウンシュウミカン Citrus unshiu
オレンジ Citrus sinensis
カボス Citrus sphaerocarpa
グレープフルーツ Citrus X paradisi
スダチ Citrus sudachi
ダイダイ Citrus aurantium
タチバナ Citrus tachibana
ナツミカン Citrus natsudaidai
ハッサク Citrus hassaku
ブンタン Citrus maxima
タンゴール Citrus reticulata
ユズ Citrus junos
レモン Citrus limon
カラタチCitrus trifoliata

など、思いつくものはほとんどミカン属にはいる。

いまミカンといえば、ふつうウンシュウミカンを指す。
温州(一発で変換される)は柑橘の名産地として知られていた中国浙江省の温州にちなむ。しかし本種の原産地は日本であり、温州から伝来したわけではない。舶来物をありがたがる命名である。

ミカンがウンシュウミカンを指すようになったのは明治以後。
江戸時代は小型のキシュウミカン(紀州蜜柑)Citrus kinokuniが「みかん」を代表していた。紀伊国屋文左衛門が財を成したのはキシュウミカンであった。種があり小ぶりだが酸味が強いというから昔食べたミカンかな。

なお「せとか」は温州ミカン、紀州ミカンからではなく、タンゴールの栽培品種「清見」、「アンコール」、「マーコット」を掛け合わせたものらしい。

ミカン属の分類は、種の数としてはアメリカのスウィングルが16としたが、彼に師事した田中長三郎は159種を数えた。種名にiyo、 unshu、 junos(ユズ)、 hassaku、sudachi、など日本語が多いのはそういうことだ。しかし最近の研究によると、これらはわずか4種類の原種から交配などでできた雑種、栽培品種とされる。

2020-05-07 6:03
めしべの付け根に実ができていた。

橘の実はもちろん、花も見たことはない。
しかし文化勲章(の写真)をみるかぎり、ミカンと同じ花のようだ。

むかし文化勲章をもらった某先生が御進講することになった。
緊張して起きた朝、庭に出てまっすぐな梅の枝を切り、指示棒にしたという。
芳香があるからと言って橘の枝を切って持って行っては受賞者としてはふさわしくないかもしれない。



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