2017年3月1日水曜日

結論が書いてないと怒る人たち

千駄木菜園 総目次


『モーツァルトのむくみ』が出版されたあと、中央公論新社・編集者の方は、ほとんど何も仰らなかった。ふつうは次の本に関するやり取りの間にも、売れ行きなど教えてくれるはずである。
それだけに売り上げが芳しくなかったことが察せられる。

ネットでの評価は二つに分かれた。

一つは「読書メーター」サイトの何人か言うように、病因について結論がなくとも、マニアックすぎる推理自体が楽しいという評価。

yn_redqueen氏
"  忠告、「かの偉人の知られざる死因が明らかに」…というワイドショー的な華やかを期待してはいけない! 結論にしても「その可能性が一番高い」と断定せず「なぜなら、証明のしようがないから」と非常に科学的な本なので『医療関係者、理科屋、知識のある病気マニア向け』と、驚くほどニッチな本である。万人向けでないロマンに満ちた本。微妙な邦題とそれゆえの勘違いレビュー散見、と運の悪い本だが私は楽しかったぞ。 "

ばな 氏
" 1話目アクナートンについてはよく目にする話で新鮮味を感じなかったのですが、そこからは渋い人選が続いて楽しめました。(2話目に、これまたよく話しに挙がるモーツアルトがきていたら、そこで投げてしまったかも) 一番”おぉ!”と思ったのは、アフリカ系米国人の高血圧に対する遺伝的仮説でした。 "

http://bookmeter.com/b/4120042189

これらと正反対の評価は、アマゾン書評に投稿した人のように、
” どれもこれも「○○病の症状がみうけられるが、この点では違うので○○病かもしれない、でも、○○病の疑いもある。○○かもしれない!」でつまるところ、何なんですか?答えは解りません!12名全部その調子なので読んでいて、つまらなくて欲求不満になります。”
 と星1つの最低評価を下している。

評価が完全に真っ二つに分かれ、売れなかったということは、世の中、後者の人が多いのかな。

さて、久しぶりに(数年ぶりに)グーグル検索でブログ書評を探してみた。もともと発売以来めったに書評はなかったのに、偶然1か月前に一つ出ていた。
http://wizwiz.blog10.fc2.com/blog-category-45.html
好意的だが、やはり結論がないのことが不満のようであった。

思うに、最近の人を見ていると、結論ばかりを求め、過程を楽しまないような気がする。
薬科大の学生も、薬について生物、化学の原理からいろいろ考えることはせずに、問題集、教科書に書いてあることを丸暗記しようとする。
なぜだろう、と考え、分かった時こそが、勉強の楽しさなのに、試験前の一夜漬けみたいな勉強こそがすべてだと思っている。

ほとんど専門的な医学資料が残っていない昔のひとの病因など、分かるわけがない。
『モーツァルトのむくみ』には結論などない。
断定している本があったらそれは嘘である。

サイエンスの推理を楽しめない人は読んではいけない本なのである。
世の中、なんでも結論があるわけじゃない。


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