最新型「鼠撑器」の紹介
薬学雑誌 1891年度 p61 (明治24年)
医学、生理学の研究に実験動物は不可欠である。
とくに新薬の研究、開発には大量に必要だ。
最近は組換え細胞や、コンピューターシミレーションなどを使うようになったとはいえ,丸ごと動物,とくにげっ歯類の実験は依然盛んである.
有望化合物ならすべて,どんなプロジェクトでもネズミの実験は避けて通れない.
しかし昔はどうだっただろう.
合成者は何でも舐めていたし,薬効は先ずヒトで試されたのではなかろうか.
ちょっと怖いから動物に飲ませてみようと思っても,ネズミではなく,そばに居たネコやイヌが多かったように見える.
華岡青洲の通仙散はネコだった.
N数を増やさねばならないようなナイーブな実験は最初からしない.
実験動物の飼育業者のいなかった頃、ネズミは簡単には捕まえられない.手に入ったとしても、犬猫と比べてあまりにも人間と違いすぎる.小さくて表情もなく,同じ哺乳類だという概念などなかったかもしれない.
それでも数量的科学が西洋から入ってくると,急性毒性を見るにネズミは重宝しただろう.ただ,その取り扱い技術はお粗末だった.南京鼠(マウス)に皮下注射するのに「大概助手をして鼠を保持せしめ,二人掛り」で行っていた.
ところが東京衛生試験所(現・国立医薬品食品衛生研究所)がベルリンの器械商ラウテンシユレゾルに注文,取り寄せた装置は画期的だった.「此の器械は助人に持たしむるより却て便にして,医学校,病院,その他の試験に必要なれば」と紹介したのが下図の鼠撑器である.
当時の東京衛生試験所長は長井の後を受けた田原良純.
彼はこのとき35歳,ドイツに留学中であった.ひょっとしたら「当地には斯くも便利なるもの之あり候」との手紙を受けた所員が注文,輸入したのかもしれない.
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