2022-09-18
前の道路に出て、何気なく生垣にまとわりつく烏瓜のつるをとっていたら、目の真ん前にスズメバチの巣があった。顔から巣までほんの50センチくらい。びっくりして離れた。
何も知らず、からまったつるを取るのに巣のついた枝をゆすっていたから、ぞっとした。攻撃的で知られるスズメハチは幸い私に向かって蜂起せず、数匹が巣に出入りしているだけだった。この日は台風が近づき、朝から断続的な雨、その合間で活動が低下していたのかもしれない。
何とかいい写真を撮りたいと近づくが、やはり怖い。
庭のほうに回ると全貌が見えた。
見事なマーブル模様。
何で今まで気が付かなかったのだろう?
スズメバチによる死者は最近は10~20人だが1984年は全国で73人、2000年以前は毎年30~40人が死んでいた。これはクマや犬に襲われた死者より圧倒的に多く、動物による死因では最大のものである。
はて、どうしよう?
左のキンモクセイの枝の中に巣が見える。
ここは通学路に当たり、小学生でも手が届く場所にある。
死傷者が出た場合、私の責任になるのかな?
2016年、長野県飯島町で橋を渡っていた女性がスズメバチに刺され大けがしたとき、女性は140万円の治療費、慰謝料を町に請求し、武蔵野簡易裁判所は町に51万円の賠償を求めた。
これが民有地にあっても民法717条に定める「設置・保存の瑕疵」が適用されるらしい。
木の枝が落下して通行人にけがをさせたというなら、まあ所有者の責任になるだろうが、ハチの被害まで私の責任になるとは、可哀そうではないか?
「予見可能性」というものが問題になるらしいから、すぐ私の責任になるわけではなさそうだが、発見してしまった以上、放っておくと「予見可能性」があったことになり、賠償責任が出そうである。
駆除費用の相場は、1万円~5万円らしい(難易度、巣の場所によって異なる)。
ひょっとして、と思い「文京区、スズメバチ」で検索したら、区が駆除してくれるようだ。
良かった~。
文京区に来たのは子供たちが高校を終えてからだから、高い住民税のわりに世話にならなかったが(あ、サクラ保護樹木があった、ハクビシンも)、今回、区民として恩恵をうる。
しかし連休中、窓口は休み。メールだけ入れておいた。
ちなみに、よく見るハニカム構造が露出したアシナガバチの巣は、文京区で面倒は見てくれず、自分で撤去しなければならないようだ。この蜂はそれほど危険でなく、その巣は埼玉の家にもできたし、子どものころ信州では見つけると中のハチの子を炒って食べた。
2022‐09‐19
翌日、雨が一時的に上がったので写真を撮りに行くと、ハチが1か所しかない出入り口から顔を出していた。
ここで、ふっと、駆除するのはもったいない気がしてきた。
もっと大きくしたい。
連絡したのは早まったかな?
スズメバチの巣は4~5月ごろからでき始め(逆さフラスコ型)、7~9月にかけて球形になり、10,11月で最大になるらしい。冬になると働きバチはすべて死に、次の年の女王バチだけが越冬する。そして翌年巣は捨てられ再利用されることはない。つまり、冬になったら手で取れる。そして田舎のドライブインのように、記念品として飾ることもできる。
しかし今から、「やっぱり巣はありませんでした」とか、「業者に頼んで取ってもらった」とか、嘘をつくのもな~。それこそ通行人に被害が出たとき、こちらが不利になる。
と思っていたら、さっそく連休明け、本日8時半過ぎに区役所から電話がかかってきてた。
ちょうどこの日は業者が回っている日だという。9時半に行けるというので頼んでしまった。
2022‐09‐20 9:39
早速業者がいらした。今の季節はとくに多いという。文京区だけで週2日、一日3件、駆除しているとか。
意外と多いが、すぐ来てくれたことから、毎回3件はないかもしれない。
取った巣は記念に欲しいというと、崩れるから駄目だとおっしゃる。
彼は巣の穴にスプレー缶のノズルを突っ込み薬剤を注入した。
数匹のハチが乱舞する中、レジ袋を下からかぶせ、巣を削り落とした。
場所が手の届くところにあるということもあるが、テレビでよくやるスズメバチ駆除とは違って、あっという間に終わり、拍子抜けするほど軽作業だった。
巣は、けっこう重かった。
ふと、この中には幼虫がびっしりいることに気が付いた。
中で腐ったら記念品として飾れないではないか。
捨てるしかないか。
こうなったら分解しよう。
3時間後、薬剤噴霧されたとはいえ、恐る恐る袋を開けてみた。
ハチは死んでいた。
12:37
移植ごての赤い部分が20センチ
狭義のハチの巣(幼虫のいるハニカム構造)は二層構造になっていて、それをマーブル模様の外壁が覆っている。
巣の外壁は直径20センチほど
改めてじっくりみる。
日本にいるスズメバチは16種類という。地中や樹洞に巣を作るオオスズメバチ、信州などで幼虫が缶詰にされるクロスズメバチが有名。
市街地に営巣するのはキイロスズメバチとコガタスズメバチ。
これはどうもキイロスズメバチのようだ。
さて、内部の巣をよく見ると、幼虫は様々な大きさがあり、うんと小さいものも穴の奥にいる。
また、膜のふたで覆われている穴には成虫寸前の、手足のはっきりした蛹が入っていた。
つまり、ハチは一斉に産卵されるわけではなく、何回かに分けて産卵、育児される。
調べたら、働きバチは3週間ほどで死んでしまうが、次々と羽化して、餌を集めて育児に従事するらしい。
これらを生んだ女王バチはどこにいるのだろう?
ざっと探したが分からなかった。
キイロスズメバチは女王蜂25-30mm, 働き蜂18-25mm, 雄蜂26-28mmという。
これは微妙な差だ。そこですべて、紙の上に並べてみた。
13:19
巣の中で死んでいた成虫は全部で47匹。
右上のものがわずかに他より大きくて女王バチっぽい。
その下の2匹は交尾しているような格好で死んでいたが、大きさは働きバチである。
右下には生育ステージの違う幼虫とさなぎを並べてみた。
信州を離れて47年、薬剤が噴霧されていないとしても、気持ち悪くて食べる気はしない。
それにしても、ハチの巣の分解など、この年齢になって経験するとは思わなかった。
退職老人らしい一日。