2022年1月5日水曜日

古本の無人販売と夏ミカン泥棒

そろそろ終活を考える。(まだ元気だけど)

ため込んだ本がある。
学生時代は身軽なこと、持ち物が少ないほうがカッコいいと思っていて、引っ越しのたびに本、教科書を古本屋や学園祭古本市に出していた。
しかし就職して考えが変わった。財産と思うようになった。すぐ読まない本まで買うようになって、以来40年、澱のようにたまった。

間違えて買ってしまった本、あまりにもくだらない、手元に置いておきたくないような本もあり、そういうものは何回かブックオフにもっていったが、基本的に本は自分の歴史だと思って手元に置いていた。

ところが千駄木に来てから、もう二度と読まないことがはっきりし、図書館にもあるものは少しずつブックオフにもっていった。
10年前、20年前より安くなっていて、1冊5円か10円。
さらには、少しでも汚れていると受け取ってもらえない。(きれいだった本でも何十年も経つと不思議と汚れてくる。)
読んでほしい3人の子どもたちは、親には似ず、ほとんど本を読まない。

もう捨てるしかない。
ひもで縛るのも面倒なので、箱に入れて外に出してみることにした。
すなわち無人販売。

2022‐01‐04 9:02
一冊30円、5冊なら100円。
強気の値段設定だが、買うほうからすれば安いだろう。
読みたくなければタダでも欲しくないし、読みたければ10倍でも良い。

お金は穴をあけたお菓子の紙箱に入れてもらう。
その箱は本の横に置いてある。
すなわち売上金は箱ごと簡単に持っていかれるが、たぶん盗む人はいないだろう。

問題は売れるかどうか。
もともと家の前は、せまい私道で舗装もされておらず、車も入ってこられなくて通り抜けの人しか通らない。だからあまり期待はできない。

ところが予想外に売れた。
初日のこの日は20冊、350円も売れた。
本当は400円入っているべきだが、一人は50円玉だったのだろう。
初めての無人販売だったが、世間は思ったより正直にお金を入れてくれた。

どの本が買われたか、興味があった。
幸い並べたばかりの朝に写真を撮ってあった。
それからみると、売れたのは

1.地球の歩き方 韓国、ドイツ 
結局行かなかったが、このガイドブックシリーズは読んでるだけでも面白い。私の世界地理の知識は結構ここから得ている。地理だけでなく、例えばハングル、朝鮮語の知識はこの本の後ろにある朝鮮語講座(単なる旅行会話でない)から得た。
2.War and Medicine
2009年ころ翻訳出版するつもりで買った。写真が豊富で中にはグロテスクなものもある。後回しにしているうちに私の翻訳熱が冷めて、新品のまま眠っていた。
3.芥川龍之介・主要作品集
4.木を植えた男(絵本)
90年代に話題になった本だが、それほど面白くなかった。ベストセラーはふだん本を読まない人に買わせるために出版社が大々的に宣伝する。
5.徳川慶喜家の子供部屋 榊原喜佐子
6.氷点(上下)三浦綾子
7.駆逐艦「野分」物語
8.東京23区物語 泉麻人
9.空海の夢 松岡正剛
若いころ何かの書評で読み、勇んで買ったのだが私には早すぎたのか、つまらなかった。
10 北一輝論
11 愛はなぜ終わるのか 渡辺淳一
12 海軍技術研究所
13 Life Ascending; Nick Lane
これも翻訳しようと思ったのだが、翻訳権が先に売れていて2010年、「生命の跳躍――進化の10大発明」として邦訳が出た。だからこれもパラパラ眺めたくらいで新品のまま眠っていた。
14 甘粕大尉 角田房子
15 ウェブ進化論 梅田望夫
16 日本人の英語 岩波新書
17 星の古記録 岩波新書
など。

この日は160冊のうち20冊売れた。
まだ本棚、納戸の段ボールには、この何十倍もあるのだが、少しずつ出して、4分の一くらい売れたらいいな。
(しかし翌5日は1冊も売れなかった。)

さて、1月4日、夕方寒くなってきて本を家に取り込もうと外に出た。
初日に350円も売れて喜んでいた。

ところが、あっと驚いた。

2022‐01‐04 16:29
たった2つの夏ミカンのうち、一つがない。
前日の1月3日は結婚した子どもたちが来て新年会だった。
そのときミカンは2つあったから、盗られたのはその夜か本を出したこの日である。

今の夏ミカンなど酸っぱくて食べられたものじゃないらしい。
枝に引きちぎったような傷があった。
置いてあるものを盗むのと違い、生き物を殺すような残虐さも感じた。

なぜとったのだろう?
腹が減ったからではないだろう。いじわるだろうか。
不特定多数に対する不満なのか、我が家に対する嫌がらせなのか。
9月、10月からずっとぶら下がっていて無事だったのに、この日に取られたのは、無人古本箱を出したことと関係があるのだろうか?

2021‐12‐23
1つは3月、1つは「夏」の5月にとって味を比較するつもりだった。

取った人の心理など、彼でないと分かるはずがない。
しかし、ニュースを見れば、盗みや車へのいたずらなど、こういう人はいる。

以前埼玉の駅で自転車を盗まれたとき、駅前交番で話したら
「ちょっと借りるつもりだから、あまり罪には感じないんだよ」と言われた。
この警官はそういう高校生だったのかな? 警察官になっていなければ、平気で人の自転車を乗り捨てるのかなと思った。それは借りるのでなく自転車泥棒である。

さて、この日に我が家の門前を通った人々。
正直にお金を入れていく人と、大事に育てているミカンを盗む人。
両方とも普通の顔をして、友人もいて、普通に学校に行ったり仕事をしたりしている人々だろう。
この差は何だろう?

私も粗大ごみの日にガラクタをこっそりもらってくることはある。
歩いていて、赤信号でも車が来なければ渡る。
しかし人のものをとることはない。

私が1万円を裸で落として、誰かが拾って着服しても文句は言わない。
しかし金額的価値のない夏ミカンでも、所有のはっきりしたものを盗む行為には怒りを感ずる。

お金を置いていく人、黙って盗む人。
家の前を歩く、顔も知らない人々と、(間接的に)ふれあった一日であった。




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