研究者が失敗して、くっつかない接着剤ができて、
使いようがなかったのを
別の研究者のアイデアで栞として生まれ変わったと言われる。
「くっつかない接着剤」
「失敗」
こればかり面白おかしく強調されるが、重要なことが抜けている。
単に接着成分の合成に失敗した例なら山のようにあり、研究者は捨てて顧みることもない。
「接着力が弱い」といっても、例えばデンプンのりを薄く塗っただけでは、すぐ剥げるだけである。何回も使えない。
S.シルバーが作った接着成分は、A.フライが栞として本に貼っても薬剤が本に移らず、また乾いた状態で何回も使えるという特徴があった。
シルバーは、アクリル接着成分を微小な球体 tiny, indestructible acrylic spheresにした。
ウィキペディアの電顕写真を見ると
押しても粒はつぶれず(つまり広がらず)紙と接触するだけだから、剥げやすく、また何回でも使える。感圧接着剤というものである。
接着テープの側は、(製法は知らないが)例えば、粒がつぶれるくらい圧をかけて紙の線維の中に成分を入り組むようにしておく。こうすれば接着テープのほうは薬剤がはがれない。
さて本とポストイットの接着面を考えると、本の側は、微粒子が点で紙と接触、ポストイット側は他の微小球体に囲まれている。だから、ポストイットは本から簡単に離れ、接着成分(微小球体)が本の側に移らないのだろう。
ポストイットのセレンディピティは、フライのアイデアだけはなく、材料がユニークで本物だったから、ヒット商品になったのである。
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