お隣の伊藤さんから渋柿をいただいた。
渋柿は干し柿にしないと食べられない。
逆に言うと甘柿はカビが付きやすいから干し柿にできない、とずっと思っていた。
すなわち甘柿は、渋柿の防腐成分のタンニンがないことに加え、微生物の栄養となる糖分が多いからカビやすく干し柿にならないと思っていた。
ところが、干し柿に渋柿を使う理由は単に糖分が甘柿より高いからだという。
甘さが渋みにマスクされているため、干し柿にすると渋みが消えて渋柿のほうが甘くなるらしい。
甘柿は渋柿から品種改良したと思われるが、渋みとともに甘みも減ってしまったのだろう。
とにかく干し柿を作る。
千駄木に来てから、3,4回目かな。
2022-10-13 22:03
皮むきはテレビを見ながら夜なべ仕事。
皮を鍋に入れたのは夜なべだからではない。
ネットなどでは紐をつけたあと熱湯をくぐらせ殺菌すると書いてあるが、以前そうしてもカビが生えたので、そのままつるした。
カビは手で触ったところよりも紐などに接触しているところから生えてくる。
2022‐10‐14 8:34
渋いとは何だろう?
甘み、塩味などは舌で感じる。つまり砂糖は舌に乗せれば甘いが、下唇の内側、歯茎のあたりに乗せても甘くない。ところが、渋みというのは口の中全体で感じる。辛味が熱と同じように(hot)口腔内全体で感じるのと似ている。
渋みを感じさせる成分はタンニンという。皮をなめして革をつくるtan(なめす、日焼けする)と成分、物質を示す接尾語inから来ている。皮のたんぱく成分と結合し変性させる。
まだ化学構造が不明な時代に命名されたもので、構造が明らかになるとフラボノイドなどのポリフェノールが重合したものと分かった。
柿のタンニン
https://cosmetic-ingredients.org/deodrant-agents/persimmon-tannin/
タンニンの構造式は上記のようにネットのあちこちに書いてあるが、この構造で、なぜ渋いかは書いてない。
自分なりにちょっと想像してみる。
柿のタンニンは上の図でn=30程度、分子量は平均 11 kDaの高分子である。
フェノール性水酸基が多いことで水溶性であるが、容易に難溶性となり、そのため構造決定が遅れた。しかしこの簡単に難溶性となる性質ゆえ、時期がきたり操作したりすることで渋みが消えることになる。
さて本題、なぜ渋いか?
高分子であることから甘み、旨味成分のように味覚受容体に結合して刺激が脳に行くことはない。このことは味覚受容体のない口腔全体が渋みを感じることからもわかる。
ただし、高分子であっても難溶性ならば拡散しないから、粘液を通過して、粘膜、細胞表面に到達することはない(合成樹脂など)。
また水溶性高分子で細胞表面に到達しても、高分子自体が水に溶けたまま粘膜に作用しなければ刺激はない(でんぷんなど多糖類、水溶性たんぱく質など)
ところが、カキタンニンはフラボノイドを多数持つ。
フラボノイドのベンゼン環は細胞表面たんぱく質疎水性部分と結合するし、多くのフェノールは高分子に水溶性を持たせると同時に生体たんぱく質のカルボニル、アミン部分と水素結合するだろう。
すなわち、水溶性でありながら我々の口腔内表面のたんぱく質と結合する。低分子物質ならこのようなものは無数にあるが、高分子では珍しい。その結果、たんぱく質は変性し、その下まで来ている感覚神経が刺激される。すなわち渋味とは味ではなくて、触覚みたいな皮膚感覚に近い。
つまり、高分子、水溶性、たんぱく質に結合・変性という3つの性質をもつものはそれほど多くない。このことは、渋味を持つものが(苦みと比べ)それほど多くないことと一致する。
タンニンの皮なめし、清酒透明化なども、たんぱく質と結合することによる。止瀉作用も腸管表面のたんぱく質に結合した刺激により腸が収斂するのだろう。
さて、干し柿。
皮をむいた10月13日からずっと曇り、雨が続いた。
10月18日、ふと見ると、日が当たらなかったせいかカビが生えてしまった。
捨てるのももったいないから食べたら非常に甘かった。
タンニンの不溶化は、干し柿にしなくとも、4,5日吊るすだけで十分なようだ。
今回の反省:
干すときは何日か晴れの日が予測される時期を選び、それまで冷蔵庫に入れたほうが良い。
別ブログ
20181126 干し柿の白い粉
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