2月26日、熱海の帰りに横浜国大に寄った。
来るのは初めて。
都心から離れているため散歩、見物することもなかったし、理工学部はあるが医学部、薬学部などはないためライフサイエンス関連の学会で来ることもなかった。
千葉大、埼玉大は見たので、いつかは来ようと思っていた。K氏が防衛省から内地留学していたので、ちょうどいい機会だった。
実はつい先日まで大学がどこにあるか知らなかった。
地図を見れば三ツ沢運動場の西にある。
横浜駅から相鉄線に乗って西谷で新しくできた路線に乗り換え、一駅目の羽沢横浜国大で降りる。2019年11月開業したばかりだから駅舎はお洒落で立派だが、月曜の昼ということもあり人がいない。
横浜国大
右上が羽沢横浜国大駅
2024₋02₋26 12:50
駅が新しいのだから周辺にも何もない。
しかしこの線路(貨物線)と橋は、ずっと昔からあったようだ。
(新しい相鉄新横浜線は西谷から東急、副都心線へいくが、羽沢横浜国大で分かれ武蔵小杉、大崎を経て埼京線へいく相鉄JR直通線は、途中からこの昔からの貨物線にのる)
12:56
貨物線路を越え住宅街に入ると、丘と谷が入り組んでいるだけに道が複雑。
あちこち曲がっているうちに谷の向こうに横浜国立大学の看板を掲げた校舎が見えた。
12:58
北門から入る。
駅からここまで学生らしき人は誰もいなかったが、学内にもいない。
13:02
校舎と校舎の間は、首都圏の大学では珍しいほど、手つかずの藪になっている。
通路が舗装されていなければ山林になってしまうだろう。
聞けば、コロナでキャンパスの人口が減ったとき、クワやつる性のクズなどが繁茂し、それらが樹木化するのを防ぐため2020年、YNUヤギ部が結成され、2頭のヤギが除草に使われたという。今そのヤギはどうなったか知らない。
13:06
理工学部の校舎群を抜けると、少し広いところに出た。
図書館などがあり大学の中心らしかった。
13:06
図書館の前は芝生の窪地になっていて野外音楽堂と書いてあった。
図書館の建物でトイレを借りる。
13:18
図書館と野外音楽堂の前の道を東に進む
左が経営学部、右が教育学部の建物が並ぶ。
ここまで歩いて来て、この大学の一番の印象は樹木の多さ。尋常でない。
ここも並木というより密度濃い森の中に道を開いた感じ。
13:20
ここは大正時代にできた「程ヶ谷カントリー倶楽部」(保土ヶ谷ではない)が戦後1960年代に戸塚区に移転した跡地である。
もとはゴルフ場だったわけだから、これら樹木はすべてキャンパスを造成した後に植えたもの。ふつう大学校舎の間は空き地だったり、明るい芝生だったり、木を数本植えたり、並木も間隔をあけて植える。ところがここは鬱蒼とした自然林のように様々な木が密集し、学内道路から建物が見えないくらいである。
これは相当な思想、意思が入っていると思った。
あとで聞いたら、1961年から横浜国大に勤務されていた宮脇昭名誉教授(2021年、93歳で逝去)のお仕事だったらしい。
13:20
正門に置くような大学名YNUのモニュメントが道の真ん中にある。
この建物内に横浜国大資料館があり、K氏が見学の予約をしていてくれた。
普段は閉まっているようだが、予約した13:30に大学の広報の方がいらして開けてくれた。
13:31
資料館に入るといきなりキャンパスの鳥観図をうつした大きなパネル。
相鉄の駅から歩いてきて、すっかり山の中だと思ったら横浜が思ったより近い。
広報の人らしく「海もしっかり見えて、ここは横浜の大学なんだということがアピールできるんです」と少子化時代の志願者募集のことを考えていらした。今は国立大学もうかうかしていられないようだ。
13:37
まず目に入ったのが東京オリンピックの聖火リレートーチ。
水素ガスを燃やすことで二酸化炭素が出ないトーチを横浜国大らが開発した。
しかし全国の聖火リレーで必要とされたトーチは1万本、水素ガストーチは手作りで非常に高価、さらには2.4キログラムもあり、一般国民が持って走るには重すぎる。そこで点火式など要所だけで使われたという。
水素は燃えても水蒸気になるから色はない。見えなければ意味がないから重曹NaHCO3を添加してオレンジ色を付けたという。ナトリウムの炎色反応である。しかしクリーンを目指しているのに水素、トーチを作るのに相当なエネルギー、資源を使うのは皮肉である。「地球に優しく」というならギリシャから聖火を持ってくるなどという不思議なイベントをやめるか、古式ゆかしく薪に火をつけて走ればいいのである。
横浜国大は水素エネルギーの関連技術が得意なようで、水素中心の未来社会をパネルにしていた。しかし生産は水の電気分解という。電気を使って水素を作りそれを燃やすなら、直接電気をエネルギーに使ったほうが効率良いことは明らか。欧米が電気自動車で先行し、トヨタが水素自動車に力を入れているが、(電気分解で水素を作る限り)水素自動車が電気自動車を越えるのは熱力学の原理からして不可能である。
しかしこの資料館はオープンキャンパスで高校生を相手にする場所で、私のようなひねくれたものは少なく、彼らは「水素=クリーン=未来」をテレビで刷り込まれているからこれでいいのだろう。
多くの大学資料館が創立からの歴史やその関連品を展示しているが、そういうものは少なく、いまの男女学生の楽しそうな学生生活や笑顔で実験をしている写真が目立った。これも高校生対象だろう。
13:45
歴史的なものとして「横浜国立大学」の表札があった。
現在、各校門の表札は毛筆の書体でなくYNUを入れた現代的なフォントになっている。これも今どきの高校生を意識したのかもしれない。
13:46
キャンパスの開校当時と現在の対比写真があった。
古い建物がなくなったり、そのままだったりしているが、目立つのは樹木の生長。
故宮脇教授は、土地本来の自然植生の木を中心に、多種類の木を混ぜて植樹する「混植・密植型植樹」を提唱した。つまり、本来の植生を考えないで作った美しい森は、いつまでも人間が手入れをしなくてはならないが、それを怠れば荒廃する。本物の森なら自然の力で成長するという。人は亡くなってもその森は残るとはよくいうが、この植生なら余計残るだろう。
13:50
学生運動が盛んだったころの学内看板
これに一番感激した。
よく残っていたものだ。
学生運動については別のブログで書きたい。
14:02
創基150周年・開学75周年記念基金の寄付者名簿
広報の方は、お名前を忘れてしまったが、とても感じの良い方だった。我々3人のためだけに開けてくださり、30分ほど丁寧に説明していただき、どんな質問にも答えていただいた。とても贅沢な時間で、感謝する。
横浜国大に好印象を持った。
もし知人で関心ある人がいたら、進学を勧めたい。
14:12
これがなぜ正門か分からない。
羽沢横浜国大駅から北門、西門まで15分、
地下鉄三ツ沢上町駅から正門まで16分。
相鉄本線和田町駅から南門まで徒歩20分。
なお横浜駅から学内乗り入れバスがあり、それは正門から入る。
(しかし理工学部の人は西門から出たところのバス停を使う)
ふつう正門というと、入れば時計台とか本館とかが正面にあったり、出れば駅に向かう道に商店街があったりするのだが、ここは中も外も何もない。
正門を出ると谷を通る横浜新道(国道1号バイパス)を橋で渡り、誰もいないその道をそのまま行けばグラウンドがある。
14:22
陸上競技場
首都圏とは思えない広大なキャンパスである。春休みはクラブ活動の時期というのに学生がいない。
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