高速夜行バスで青森県にきた。
11月2日、8:15弘前駅東口に到着。午前中駆け足のように市内を見たあと、
13:50青森駅着。
駅からすぐの津軽海峡と青函連絡船メモリアル「八甲田丸」の外観だけ見て
14:37青森駅発、八戸に向かう。
電車は空いているから、景色が一番よく見える席、4人掛けのボックスを独占する。
電車は陸奥湾に沿って東に走る。
浅虫温泉を過ぎると、いったん夏泊半島を横切るため山に入ったが、それ以外はずっと陸奥湾の近くを走っていた。
2022‐11‐02 15:13
清水川駅を過ぎたころ。
陸奥湾の向こうは下北半島。
青森駅では海の向こうが下北か夏泊か分からなかったが、ここは間違いない。
斧のような形の下北半島を思い浮かべ、恐山、軍港大湊はどのあたりだろうかと、飽きずに海をながめていた。
ところで目の前の海、陸奥湾はムツワンと読む。
陸奥はなぜムツと読むか。
ミチノクとも読む。
ミチノクなら奥の細道にあるように「道の奥」である。
東海道という道では常陸国の奥、内陸の東山道では毛の国の奥。
じっさい国名として645年大化の改新のころは道奥国だったのが701年の大宝律令によって陸奥国と表記されたらしい。表記は変わっても音はミチノクのまままで、それが訛って(?)ムツノクとなり、略してムツとなったのではないか?
東北地方の太平洋側、いまの福島、宮城、岩手、青森のあたりをさした。
なんと広大な国だろう!
大和朝廷の力が及ばなかった謎の土地であり、もともと常陸国から分離したという(日本海側の出羽は越後から分離独立した)。もちろん江戸時代には開拓しつくされ多数の藩が存在したが、それでも陸奥は福島から青森までの広大な地域だった。
明治維新が起こると、陸奥は当然地方行政単位として広すぎる。
そこで分割した。
福島県のあたりは岩代国・磐城国。そこから北は陸前、陸中、そして一番遠いところは(越後や備後のように陸後とならず)陸奥(リクオウ)となった。
しかし明治4年の廃藩置県でこれらの呼称は消えたから、わずか3年だけ存在した国名だった。
(そのわりに陸中海岸、陸前高田などリクゼン、リクチュウは現在も残っているな。)
つまり、陸奥は明治以前と以後では範囲も読み方も違う。明治以後の青森県をさすときの陸奥はムツではなく、リクオウである。しかし帝国海軍八八艦隊の一番艦、二番艦はナガトとムツであった。姉妹艦として本州の両端の国名を取ったのだから本来はムツではなくリクオウと読むべきだったのである。
戦後のリンゴの品種も下北半島の市も湾の名前も、青森県を意味するのに「むつ」を使っており、リクオウは消えてしまったようだ。六ケ所村を中心とする、むつ小川原はリクゼンタカダのようにリクオウオガワラであろう。
(関係ないが、外務大臣陸奥宗光は、紀州藩士の子で陸奥家は陸奥伊達氏から12世紀に分家した紀州伊達家の末裔とされる)。
2022‐11‐02 8:32
みちのく銀行弘前営業部。
この銀行はミチノク全部でなく、リクオウの銀行である。
いっぽう、山本譲二の「みちのく一人旅」は松島、白河が出てくるから正しい。
・・・
青森発八戸行きの電車は走る。
青い森鉄道の名前通り、林の間を抜けていく。
人が珍しく乗り降りすると思ったら、野辺地駅。
下北半島に行く大湊線との分岐点である。
野辺地は南部藩の湊として栄えた。
そういえば、青森県は津軽と南部だけではなく、わずか3年ほどだったが斗南藩もあったことを思い出した。会津藩が明治新政府によって、取りつぶしのように、豊かな会津盆地から寒冷不毛の下北半島にうつされたのである。
15:23
野辺地駅のホーム西側に杉林があった。
「日本最古の鉄道防雪原林」(鉄道記念物14号指定)と看板がある。
2kmにわたって続く約700本の杉林。
日比谷公園や信州の須坂臥竜公園、小諸懐古園などを設計した林学博士・本多静六氏の進言で明治期に植林された。豪雪から線路を守るためである。
十年?二十年?くらい前、「鉄道は森に守られてきました。今度は鉄道が森を守ります」というJR?のテレビCMがあった。あの舞台はここだったのか、と古い記憶が突然出てきて嬉しかった。
八戸の海は明るいうちに見るのは難しいかな。
三沢を過ぎたころ、線路際の山の上にお城のような長い塀が現れた。
15:37 乙共をすぎる。
森を抜けると平野。思ったより広い。小川原が近い。
オットモとは、いかにもアイヌ語のような地名。意味は知らないが。
15:38
空いた車内を改めて見ると、つり広告に民間のものがほとんどない。
2023青森県民手帳とか、県民運動推進フォーラムとか、縄文遺跡群世界文化遺産登録とか、地元のお知らせばかり。
工事中のようで、やがて城門のようなものが見えた。慌ててスマホで現在地をみると星野リゾート青森屋だった。
新幹線ができて、沿線はすっかりさびれてしまったが(それゆえに)、星野リゾートができたのが面白い。
16:08終点、八戸駅到着。
目的地の鮫駅へは、16:22発JR八戸線に乗り換える。
階段を上がると駅ホーム除雪スタッフ募集の看板。
16:13
時給1850円。ぜひやりたい。
もうこちらに二度と来ることはないだろうけど。
勤務地は陸奥市川駅という。
読みはリクオウではなくムツイチカワである。
(続く)
ここまでのブログ
20221113 青森ベイブリッジと青函連絡船
20221112 弘前のスタバと第八師団、偕行社
20221110 弘前大学・太宰治と遮光器土偶
20221108 弘前のバナナいなみやとコーヒー教師館
20221107 弘前城と津軽氏の苗字について
20221103 高速バスと旅行支援で貧乏旅行、青森へ
0 件のコメント:
コメントを投稿