2025年2月1日土曜日

クルーズ5 瀬戸内海と船内の食事

クルーズ船飛鳥IIは、1月15日、広島港(宇品)を定刻20:00より少し早く、19:45に出航した。一晩で横浜から名古屋まで航海する船が、明日は昼一日かけて、ゆったりと瀬戸内海をクルージングする。朝出ても十分なのだが、港湾使用料とか何か理由があるのだろう。

夜、船内を歩いていて、名前が書かれたプレートに気づいた。

2025₋01₋15 21:55
CRUISE MILESTONEとして、飛鳥で1000泊、2000泊した人が顕彰されていた。
2000泊の人は二人。お二人は当然1000泊のところにも名前があり、年月を引き算すると、それぞれ5年半、6年半で1000泊されていた。5.5X365=2007日である。半分も飛鳥で王様のように暮らすというのは、この方の資産とか地上での暮らしぶりとか、想像つかない。

私は数泊ですでに、夢のような旅が終わるのが怖くなっている。家に帰ったら部屋は寒いし、散らかっているし、いろいろ面倒なこともあるし・・・現実逃避というのはこういうことかと思った。
2025₋01₋16 7:01
翌16日朝、目が覚めてベッド(左舷)のカーテンを開けるとあちこちに島があった。

瀬戸内海のどこだか全く分からない。

前日、2枚の航路予定図が部屋に届けられた。
1枚には飛鳥の標準航路(青)と法定航路(赤)。
今回のクルーズは広島から出たので、左下の松山沖から来る飛鳥標準航路ではなく、広島港から江田島・能美島の西を通り、柱島の東を過ぎ、鹿島と怒和島の間から安芸灘に出ている。
(赤の法定航路というのは、特に交通が頻繁な個所について、海上交通安全法で指定されたもので、全国に11あり、うち8つは瀬戸内海にある。そこでは定められた「航路」を12ノット以下で通過しなくてはならない。)

もう一枚は今回のクルーズでの橋などの通過時刻が書いてある。
7:20に大下瀬戸(おおげのせと)、
8:45 因島大橋、
12:00 瀬戸大橋、
18:00 明石海峡大橋
となっている。
瀬戸というのは海峡の特に狭まったところを指し、だから瀬戸内海は「瀬戸に挟まれた内なる海」ということになる。

2枚の航路図と島の形を見ていても瀬戸内海は初めてなので現在地は分からない。
(スマホのGPSを使えばいいのに気付かなかった)

眠くもないので服を着てレセプションホールに行ってみた。
今日のクルージングに備えて大きな瀬戸内海の海路図が張ってあった。
7:07
定価 13,440円にはびっくり。
乗客も「普通の紙ですよね?」と触っていた。
7:08
横のモニターを見ると、飛鳥は広島港を出た後、柱島の横を通って真っ暗な瀬戸内海をゆっくり行きつ戻りつ、時間をつぶし、いま大崎下島を過ぎようとしていた。
(柱島は海軍の艦艇停泊地があったところで陸奥が謎の爆沈をした場所として知られる。)

朝食はいつも4人で8時から5階レストランでとることになっているので、その前に12階に上がり、瀬戸内海の島々を見ようと思った。
しかしエレベーターで上がる途中の11階でおりた。
無数にある島よりも、まだ見ていなかったリドカフェ、リドガーデンの朝食を覗いてみたかった。
ここはフルサービス(和定食)の5階と違ってブッフェスタイルだが、種類が豊富。
7:12
和食コーナー
7:12
11階 リドガーデンからの景色
窓の外は大崎上島の佐々木造船か。
ということは、すでに大下瀬戸は通過している。大下の瀬戸は広島湾や松山から竹原、三原に行く大型船が通るところで、交通は頻繁である。

野菜
枝豆は皮をむいてある。
7:13
チーズ各種とハム・サラミ
デニッシュなどパン類
焼き立てができるとウェイターがテーブルの間を周って配ってくれる。

ソーセージ、ベーコンなど

7:14 和食のおかず
朝からカレーもある。

7:15
リドカフェのドアからデッキに出て瀬戸内海を眺めたが、どこがどこだか分からない。
島は急峻で「瀬戸の花嫁」にあるような「段々畑」はなかった。

再びリドカフェ、リドガーデンに戻る。
7:17
日中、焼き立てハンバーガーを出しているリドグリルは、この時間フレンチトースト、パンケーキなどを提供している。

プール側のデッキに出て階段で12階に上がった。
7:18
12階から右舷前方をみる。
7:19 右舷後方
7:22
7:23
大崎上島と大横島の間を通過
7:24
大横島、小横島の向こう、大三島から朝日が昇る。
大三島は愛媛県の最北端、同県で最大の島である。人口4900人、平成の大合併で今治市となった。近年人口減少がはなはだしいが、島内にある大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)は伊予国一之宮である。旧社格は国幣大社で、全国に存在する三島神社は、ここと伊豆国一宮・三島大社を総本社とする。

それにしても○○島というのは、○○が地名なり単語として成立するものだが、大三島の大三はそうではない。たぶん島に御がついて次に大がつき、大御島が本来の文字ではないか?隣の大横島とも対応する。本州と四国の間の小さな島として考えてしまう現代と違い、地図もなく行動範囲の狭かった古代は十分広い陸地だったのだろう。

瀬戸内海は大島、上島、下島、横島、豊島、向島、本島、中島、など、いかにも地元民が古くに名付けた普通名詞のような島名が多い。

ここで部屋に戻った。

朝食は5階で、座るときウェイターが椅子を引いてくれるレストラン(フォーシーズンダイニングルーム)で優雅にとるはずだった。ところが若いN君が前回のクルーズで食べた11階のフレンチトーストを食べたいという。朝の和定食を食べたあと11階に一人で行って食べればいいのだが、空腹状態で食べたいのだろう。

それでは、と4人で11階に上がった。
私にとっては初めての飛鳥ブッフェ朝食。
8:05
オムレツをつくっているコーナー。
出来上がったお皿にケチャップで船、ペンギン、アヒルなどを描いてくれる。
8:11
この日の朝食。見るとどれも食べたくなってしまい、食べ過ぎ。
フレンチトースト(右上)やオムレツ(右下、ケチャップはアヒルの絵)は、焼いているところに自分のテーブルの小さな木札を置いてくると、出来上がり次第、ウェイターが持ってきてくれる。
8:35
顔を上げるとすぐ近くの島が緑の屏風のように窓一杯になっていた。
因島大橋の手前の岩子島か、あるいはその手前の三原の糸碕か。

8:41
因島大橋が近づく。
因島は広島県尾道市に属す。本土の尾道と対岸の向島のあいだの尾道水道は200メートルほどしかなく(飛鳥の全長は241メートル)、フェリーと橋が2本ある。
因島大橋は、その向島と南の因島の間にある。西瀬戸自動車道「しまなみ海道」のために1977年起工、1983年供用開始した。
8:42
右舷から橋をみる。対岸が因島。
この海峡は、幅約800mの布刈瀬戸と呼ばれ、橋の長さは1270メートル。布刈(めかり)瀬戸は、瀬戸内海の主要航路である来島海峡(法定航路)の副航路・三原瀬戸航路を構成しており、1日あたり400隻の大型船舶が通行する。そのため、支間長770m、桁下は50mと設定された。
完成当時としては日本最長の吊橋であり、ここで培った技術がのちの大鳴門橋や瀬戸大橋・来島海峡大橋・明石海峡大橋などの吊橋に活かされた。

朝食後、風呂に入ることにした。
12階に大浴場がある。
9:07
12階からの眺め
9:08
9:09
風呂へ行く途中の廊下にプレートが何枚も貼ってあった。
見ると今までの飛鳥の国内外の寄港地から贈呈されたものだった。
送り主は自治体だったり、観光協会だったり。

風呂は好きでないが、頭を洗ったり髭をそったりするのに入らないわけにいかない。
初回は部屋の風呂だったが、
2回目は12階の大浴場。
今回、朝の大浴場は3回目。
9:13
朝のせいか、ほとんど人はいない。奥に露天風呂へ出るドアがあり、営業時間でOPENとも書いてあるので行ってみようとしたがドアがあかない。あまりじたばたしているのもみっともないので諦めた。あとで聞くと非常に重いそうだ。

この日は上陸観光がなく一日クルージングなので11時から45分の初級ダンス講習会があった。

講習会が終わると、瀬戸大橋が近づいてきた。
11:53
波の近さからして6階のデッキから見たのだろうか?
右舷には讃岐富士など香川県の独立峰がいくつもみえる。
駿河湾の富士山と同じで、陸地からでは建物などに隠れてしまうが、海上からだと(信じられないほど)よくみえる。
右側は善通寺、金刀比羅あたりの山々か。
瀬戸大橋は児島(1967年倉敷市と合併)と香川県坂出市を結ぶ。1978年着工1988年供用開始。初めて四国と本州が陸路で結ばれた。
香川県にぞくする塩飽諸島の東部の5つを結ぶので、橋梁6つ(一番南の沙弥島は埋めたてられ坂出と陸続きになった)、それらを結ぶ高架橋4つを合わせ、10の橋がかけられ、全部合わせて瀬戸大橋という。全部の長さは12,300 m (海峡部 9,367 m)。自動車、鉄道共用橋としては世界最長らしい。
11:56 こちらは岡山県側
11:58 通過直前 岡山側
11:59 通過 香川県側
瀬戸大橋を通過、香川県側にまだ讃岐富士などがみえる。

昼食は4人で12:30から5階で食べることになっている。
海と島を見飽きたので11階、リドカフェのブッフェ昼食を覗きにいった。
12:12
左の山塊は昨年夏に訪ねた讃岐国分寺の裏山に当たる五色台のようだ。
12:12
11階、リドガーデンの昼のブッフェ

スイーツ各種
最初のころは喜んで食べていたが、このころは飽きた。
どれもきれいで可愛らしい。色んなものが食べられるように一つ一つが小さく作ってある。
12:13
ハンバーガーはうまい。
グリルコーナーで席札を渡せば、出来上がるともってきてくれる。

ランチブッフェは11:30~13:30で、それを過ぎると片付けられてしまうが、ハンバーガーなど6種の軽食とスイーツ、ドリンクなどはそれ以外の時間でも食べられる。
12:14

12:14
ふと、音楽が聞こえてきた。
12:17
フィリピンのバンド「ラグーナトリオ」が演奏していた。
彼らは下船のときの演奏も担当する。

飛鳥には「アスカオーケストラ」(ポーランド・ウクライナの7人組)、「ラグーナトリオ」(フィリピン)、「ナマナ」(女性ボーカルのいるフィリピン5人組)、「ヒミグデュオ」(フィリピン)の4バンドがいて、それぞれ交代でパームコートなどのラウンジやクラブ、ピアノバーなどで演奏している。ダンスパーティにはアスカオーケストラとナマナが1日交替で来てくれた。

フィリピン人は歌唱、演奏などに優れている。日本のように受験とか真剣すぎるスポーツクラブ活動などがないと、単純に音楽好きで少しばかり才能のある子どもは伸びるのかもしれない。

何も食べずに部屋に戻った。
12:23
ベッドの脇の窓(左舷)から円錐形の島が見えた。
大槌島か。
讃岐富士が海没したかのよう。讃岐平野のビュート、メサ地形の成立が瀬戸内の島々と同じであることがよく分かる。

12時半になったので、4人そろって5階のレストラン(フォーシーズンダイニングルーム)に行く。
12:45
この日は海老カツ、ヒレカツ重
ここは定食だけだが、ブッフェのようにとりに行かなくていいので楽だ。

この日は18:00ころ明石海峡大橋をくぐったのだが、もう見に行かなかった。

今回、飛鳥では10泊したから夕食、朝食は10回食べた。
しかし10泊は連続した3つのクルーズであり、それぞれの横浜出航日は昼食がないため、船で提供される昼食は7回。
名古屋、広島で上陸した日は帰船して11階でハンバーガーなど食べた。新宮に上陸した日は11階のランチブッフェに間に合ってそこで初めて食べた。
残る4回は5階のここで食べた。

その4回の昼食とは、この日のカツ重と、海鮮丼2回と鴨ソバだった。
カモというのは、強靭な筋肉と海を渡るためのエネルギー源の脂肪の両方がたっぷりあるから旨いんだろうな、と思いながら今までで多分一番高級な鴨ソバを食べた。

海鮮丼の写真が撮ってあった。
2025₋01₋14 12:34 
5階の海鮮丼。他の小鉢、椀物も絶品だった。
この日は足摺岬を目指し太平洋沖を一日航海していた日である。

11階のランチブッフェの写真も1枚だけあった。
2025₋01₋17 13:32
リドガーデンでの昼食
この日はひとりで上陸したが、新宮からの紀勢線の電車が少なくて早めに船に帰って来た。そのおかげで13:30までのブッフェにぎりぎり間に合った。相変わらずいっぱいとってしまったが、美味しそうに見えて無料ならばこうなる。
しかし、一番おいしいと思ったのは右のパンだった。

夕食は、飛鳥だから当たり前だが、毎回豪華だった。
乗船初日は初春会席。
初春会席
祝箸を包むきれいな和紙を開くと金粉が入っていて、これを前菜の「青唐辛子のせ炙り金目鯛寿司」にかけて食べた。我々は3つのクルーズに乗ったので初春会席を2回食べた(内容は少し違った)。二回目のときKさんが「この箸をお土産にしたいので普通の割りばしをもらえないか」とウェイターに尋ねると、彼はそのまま使ってよい、と空いている隣の席の祝箸を渡してくれた。ちなみに、金粉はもちろんAuだから何の味もしなかった。

何の味もしなかったといえば、ある夜の料理にたっぷりトリュフのスライスが乗せてあった。今まで食べたトリュフはいつも少量だったから実は味がよく分かっていなかった。今回ほど大量に食べられることはないので期待して口にしたのだが、やはり味も香りも分からなかった。他のものも一緒に口に入れてしまったからだ。トリュフのあるなしで比較できないなら、せめてトリュフ単独で口に入れるべきだった。

初春会席以外のディナーも4回分メニューがとってあった。
夕食4回(和食、フレンチ2,イタリアン)と朝食3回のメニュー
和食は縦書き、洋食は横書き。

飛鳥では3か月半の世界一周であっても1回のクルーズでは同じメニューは出ないという。

ディナーの最後に出るデザートも豪華なことは言うまでもない。例えばアイスクリーム、ケーキ、モンブランが一皿に盛られて供される。
この時一緒に出た紅茶の受け皿に小さなチョコレートが乗っていた。飛鳥のロゴがデザインされていてオリジナルのようだった。しかし後でお土産として3個、税込み2268円で船内ショップで売られているのにびっくり。あんな小さなものが700円! 「Chocolat de 吉祥」とのコラボのようだが、この店の公式サイトをみると3個入り2700円、8個6804円で、普通のチョコではなかった。

また、19:30から23:30まで11階のリドガーデンでは、ブッフェスタイルで麺類やお茶漬け、串揚げ(酒のつまみ)、スイーツなど夜食が用意されている。お茶漬けといっても普通ではない。鯛の刺身、いくら、鮭、うなぎ、明太子、アサリ佃煮、その他もろもろ(思い出せない)、全部トッピングすると(お茶をかけなければ)豪華な海鮮丼と同じである。ダンスが終わって寝る前に何回か食べた。

クルーズも終盤になると、御馳走の喜びが薄れてきて冷静になる。毎日、胃袋の能力以上のものを目と脳が口を通して送り込んだ。これは体に悪いのではないか? 空腹状態が一度もないというのは幸せではないのではないか? いくら金持ちになってもお腹が空いたときのおにぎりほど旨いものはないだろう。カレーライスを腹いっぱい食べるのも幸せだ。
と言いながら、初めての豪華クルーズから帰宅して2週間たった本日、これを書いていて、また「全部」食べたくなってしまった。

(続く)


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