薬学雑誌 191号40頁(1898年) より
牛酪はバターのこと.ほとんどの日本人がバター,マーガリンを見たこともない明治31年なら鑑別法も必要かと思ったが,これは外国雑誌(1897)の紹介記事である.
マーガリンは普仏戦争の頃,バターが欠乏していたフランスで代用品として生まれた.ナポレオン3世(1世の甥)が懸賞募集し,1869年化学者Mege-Mourièsが発明,1872年オランダで生産が始まった.つまり,鑑別法が出るくらい欧州に於いても珍しかったのである。
日本にも明治中期に輸入されたが,横浜などの外国人のためのものであった.1908年には国産されたがわずかであり,名前が「人造バター」からマーガリンと変わった戦後の昭和27年ごろから少しずつ広まったらしい.
私は給食で初めて食べた.銀紙をむいて四角いものをパクっと口に入れて気持ち悪かったことを思い出す.
さて「十%のエーテル製牛酪溶液の1滴を硝子板に滴下して蒸発せしむれば円形瘢痕を残し,マルガリンを以ってすれば鋸歯状縁を有する瘢痕を留む.また混和物にありては無水アルコールに於ける溶解度の差異に基づきて鑑別するを可とす.即ち牛酪はマルガリンより一倍溶解し易く,(略)」.
今は原料が大きく変わっているから再現できるか不明である.例えば昔のマルガリンは牛脂を原料にしているが,今は植物油を水素添加で一部飽和化させ、固化させている.
当時の薬誌は,食品分析の記事が多い.農芸化学会(設立大正13年)なども無いころ,社会は薬学に対し生活化学全般に関して期待していた.
今マーガリンと言えばトランス脂肪酸が話題になる.これは水素添加で高温にするときシスの二重結合がトランス化することによる。どの程度の含量か、毒性か、私は知らない。
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