薬学雑誌1900年度P427,439(明治33年)
高松米次郎,政木乙吉
缶やびんに食物を入れて加熱殺菌して保存する缶詰の原理は,1804年フランスで考え出されたらしい.1861年アメリカ南北戦争で軍用食として活躍して以来,需要が一気に増えた.
わが国では,1871年(明治4年)に長崎の松田雅典がフランス人の指導で,いわし油漬缶詰を作ったのが始まりという.明治中期には軍用だけでなく「不生産の季節に新鮮なる食品を供給し或いは他国に輸出するの目的を以って」缶詰生産が盛んになってきていた.
さて,食品の分析は当時の薬学界の重要,人気テーマであり,2題合わせると24頁の大作.高松論文は20種類の缶詰について,黴菌を調べている.
当時は殺菌が不十分なためフラン器に入れると繁殖,ガスを発生するものがあり,「打検法」で音を聞く.にぶい音なら合格.さらに寒天培地で検査する.
滅菌技術の未熟さを防腐剤で補う不良業者もあったから,サリチル酸,ホウ酸,硝酸カリも調べた.
試験された缶詰は,みかん,栗,松茸,はぜ佃煮,のり佃煮,鮒,牛肉,穴子,福神漬け,鮎,鯛,鮭,伏老(貝)など.これで松茸が当時ありふれた食材だったことがわかる.佃煮などはそれ自体保存食の気もするが,ハイカラな缶詰にすることで有り難味が増したに違いない.
一方,政木は
「缶詰を食し鉛毒にあたりし人,欧米各国古来その例に乏しからず」
と恐れられていた鉛について,各国の規制状況や溶出についての欧米の研究を解説している.容器であるブリキ缶は錫メッキであるが,錫そのものが小量の鉛を含有していること,また蓋を密閉するに用いる封蝋(ハンダ)が鉛,錫の合金であり,徐々に(特に酸で)溶けることから,世界中で大問題になっていた.
107年後の今,鉛はない.
でも開封したら金属の溶出が早まると昔聞いた.
ずっと切り口が溶けるものと思っていたが酸素が入ることが原因らしい.
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