2019年4月24日水曜日

製薬企業ランキング2019 武田とBMS

国際医薬品情報の最近号(2019年4月8日号)に医薬品メーカーのランキングが出ていた。

ランキングの指標が売上高であることに異論があるかもしれない。

最近は高い医薬品が多く、とくに一般人が知らないような病気、ごく少数の患者で使われている医薬品で、総売り上げは決まる。つまり一般人がよく見る有名企業の順位と売り上げはリンクしない。また、たとえばオプジーボが年間3500万円という薬価が付いて、すぐそのあと規制当局に値下げされ、いま半額になっていたりする。だから会社の規模が変わらなくとも、売上高はずいぶん変わるものだ。

とはいっても、大きなメーカーはいくつもの薬をそろえ、総売り上げが減らないように、新薬や企業の買収を常に行っているから、意外と売り上げの順位は変わらない。

売上高以外にランキングを示す指標は見つからない。
販売した医薬品の重さを指標にしてもおかしいし、従業員数を指標にしても、兼業メーカーもあって、比較は難しい。

さまざまな調査会社が行う調査では、たいてい売上高のうち、医療用医薬品に限っている。決算報告書でも分かれている。
GSKは消費者向けヘルスケア部門を拡大し、昨年末ファイザーの同部門と統合し、新会社は1兆4千億円の売り上げが期待される。バイエルもOTC薬は世界2位でかつ農薬、動物薬などアグリビジネスの割合が高い。サノフィもエスエス製薬を傘下に置くなど、OTCに力を入れる。JnJもバンドエイドなどコンシューマヘルス薬品の割合が高く、それらは加えない。
またワクチンは入るが、検査薬は入らない。

以下に過去4年間の数字を示す。

18 17 16 15 2018 2017 2016 2015
1 1 1 1   ファイザー 米 50,042 48,977 48,259 44,950
2 3 3 4 ロシュ 瑞 47,590 41,880 39,689 38,824
3 2 2 3 ノバルティ 瑞 44,751 43,085 42,706 39,602
4 4 6 7 J &J 米 40,734 36,256 33,464 31,430
5 5 4 5   メルク 米 37,689 35,390 35,151 34,782
6 6 5 2 サノフィ 仏 35,197 34,122 33,753 41,265
7 8 9 10 アッヴィ 米 32,753 28,216 25,638 22,859
8 7 8 8 GSK 英 30,945 28,898 28,793 27,251
9 10 11 11 アムジェン 米 23,747 22,849 22,991 21,662
10 12 13 14 BMS 米 22,561 20,776 19,427 16,560
11 9 7 6   ギリアド 米 22,127 26,107 30,390 32,639
12 11 10 9 A・Z 英 22,090 22,465 23,002 23,641
13 14 15 13 E・リリー 米 21,413 19,785 18,064 16,788
14 15 14 16 バイエル 独 19,777 19,020 18,177 15,257
15 16 16 15   ノボ・ノル 丁 17,670 16,978 16,655 16,081
16 13 12 12 テバ製薬 以 16,046 20,171 22,664 17,884
17 18 17 17   武田  日 15,931 15,022 14,450 14,456
18 17 18 19 アラガン愛 15,787 15,941 12,885 11,321
19 21 21 23 セルジーン 米 15,260 12,973 11,185 9,256
20 20 20 18 ベリンガ・I 独 15,130 13,589 11,877 13,424
21 19 24 27   シャイアー 愛 15,017 14,898 10,886 6,100
22 22 22 21 バイオジェン 米 12,860 12,274 11,133 10,764
23 24 19 20   アステラス 日 12,103 11,600 12,102 11,235
24 23 23 22 マイラン  オ 11,269 11,760 10,967 9,363
25 26 28 28   CSLベ 豪 7,915 7,062 6,651 5,733
26 25 25 25   第一三共 日 7,813 7,941 8,261 7,706
27 27 27 24   大塚  日 7,403 6,911 6,943 8,027
28 28 26 26 メルク 独 7,376 6,873 7,588 7,697
29 29 29 29   エーザイ 日 5,471 4,984 4,634 4,343
31 30 30 30   セルヴィエ 仏   4,688 4,329 4,329

数字は国際医薬品情報 2016年~2019年から。
単位は百万ドル。億円とみてもよい。

ざっとみれば、抗がん剤のトップ3(いずれも全医薬品のトップテンにはいる)をもつロシュが強い。ファイザーが必死に逃げているが、涼しい顔をして追い越すのではないか?

ギリアドの落ちが目立つ。
抗ウィルス薬(AIDS、C型肝炎)ですい星のように現れたが、肝炎などは完治して新規患者が少ないのだろうか、3年前と比べ、これだけ落ちた会社はない。もっとも従業員数もそれほど多くない。

BMSの躍進は小野薬品のオプジーボだろう。

武田が1月にシャイアーを買収したので現時点では、30,948となり、僅差で8位のGSKを抜く。
しかしやはり1月に買収合意した10位のBMSと19位セルジーンの合計が37,826なので5位となり、武田シャイアーは9位。為替などで簡単に10位のGSKと入れ替わる。

シャイアーはこうしてみると、3年前はアステラスはもちろん、第一三共、大塚より小さかった。このとき買っておけば良かったというのは早計で、合併によって成長したわけだから、このとき買っても今のパイプラインがあるわけではない。

それにしても武田の合併だが、
製薬メーカーは規模が大きければいいというものではない。
やはり、品格だろう。
かつてのバイエル、リリー、メルクなどが好きである。
サイエンス。
画期的なものを発明すれば尊敬される。
そのようなメーカーになるように合併すべきではないか?

今回BMSがセルジーンを買収したのは、レブリミド(97億ドル、多発性骨髄腫)の獲得もあるが、これからのがん治療で期待されるCAR-T療法が欲しかったということも大きいだろう。セルジーンは、この技術を持つJuno therapeutics(2013年設立)というベンチャーを2018年1月に91億ドルという高値で買収したばかり。BMSは1年遅れて今年1月にそのセルジーンを740億ドルで買収してそっくり手中にした。

遺伝子治療でもあり細胞医薬でもあるCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)は、ノバルティス、ギリアド、セルジーンの3社が世界を大きくリードしていた。それぞれのCAR-Tは、ペンシルベニア大、カイトファーマ社、ジュノ社によって研究開発されたもので、ノバルティスのキムリアは先月日本でも承認された。

BMSが新しい治療法、新しい技術を獲得しようとしているのに対し、武田はどうか? シャイアーは1986年にイギリスで設立された。以後、会社ごと製品を買収買収で成長し、最後は2016年に320億ドルで血液製剤のバスクアルタを買収した。
自社の技術で成長したわけでないから、研究力がどれだけあるか疑問である。

武田シャイアーは、ウェバー社長が単純に売上高でベストテンに入りたい、という希望だけの合併に見えてしょうがない。

そうはいっても、サイエンスの競争のような製薬企業ベストテンに日本の企業が入るのは、まあ気分が良い。家電、半導体、造船などの製造業が中韓に負けた今、この分野だけでも死守したい。本社がアイルランドに移転しないことを祈るばかりである。

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