2017年1月28日土曜日

アークヒルズ以前のスリランカ大使館

長女の結納で六本木のアークヒルズに行った。
18時前、サントリーホールの前、カラヤン広場は開演待ちの人々が時間をつぶしており、皆なんとなくおしゃれだった。

そのまま、結納会場の全日空ホテルへ行くには時間があるので、夜なのに散歩することにした。前回来たのは14年前の2003年、ANAホテルでのシンポジウムだった。その前この場所に来たのは42年前の1975年。このときはアークヒルズがなかった。

大学1年の夏、学生課の掲示板でスリランカ大使館の草取りというアルバイトを見つけた。4000円。当時の普通のアルバイト相場。
 農家の長男だったから草取りには東京の誰よりも自信があり、なんだかよくわからない大使館というものに入ってみたい気もあって行ってみた。お屋敷町の洋館という感じ。門の反対側に庭が有って樹木の間を独りせっせと草取りした。
 昼になり食事に外へ出た。
 崖のあたりは緑が意外と多く、静かで日差しがまぶしかった。教えられたとおり近くの細い階段を下り、食堂にはいってオムレツと厚切り鮭の昼定食を食べた。いつもの大学生協や寮食より少し豪華だった。
 午後も蚊に刺されながらひたすら草取り。途中声がかかり、クッキーと紅茶が出たが、庭で一人飲み、帰るとき2階に招かれ初めてスリランカ人の偉そうな人と握手して、アルバイト料をもらいサイン。ちょっと期待した英語を話す機会もなかった。

現在、大使館は高輪に移転。かつての場所はARKヒルズの開発で街並みどころか道路さえも変わっている。あの石段はどこだったのだろう。
調べたら、当時の区道と新しい計画道路が合わせて描かれた地図を見つけた。
よく見ると確かに階段はある。
アークヒルズとなる坂下、首都高に面したところは、航空写真だとめぼしい建物が何もない。地形が複雑なこともあり区画整理が進まず、震災、戦災にも焼け残った古い家屋が密集していたらしい。

2枚とも橋本清春ら:「赤坂・六本木地区第一種市街地再開発事業の概要」(1985)より

42年たってその場所に行くと、石段は広い車道になり、坂上の大使館の場所は、霊南坂教会の並び、いまの霊南坂ビルか、Blossom Terraceというマンションのあたりである。すぐ先はホテルオークラであり、アメリカ大使公邸があるせいか、ポリスボックスが二つもあった。

夏の静かな細い石段にかかっていた木は、緑の枝は覚えているのだが、何だったか。
イチジクだったような気もする。


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