50歳を過ぎたころ、田端に住みたいと思った。
電車が便利だし、坂道、崖には木々が残っているし、文士村というくらい戦前は文化人が多く住み散歩するには楽しいし。
しかし縁がなかったのか、結局千駄木に引っ越した。
それでも田端はしばしば歩く。
2017-02-25
南改札口はとても山手線の駅とは思えない。
駅を背すると(つまり上の写真の反対側)、正面に斎場がある。これも意外な景色だろう。
以前は塾があった気がする。
少子高齢化か。
そしていきなり石段がある(不動坂)。
以前は塾があった気がする。
少子高齢化か。
そしていきなり石段がある(不動坂)。
それを上って振り返ると電車がよく見える。
谷中からずっと続く尾根道には古地図の忠敬堂があった。
初めてきたのは1995年。
昔小学校の社会の時間、黒板の横に大きな地図がかけられたが、この店にもその種のものが何本かあって、20万、30万円くらいだったかな。戦前の満州、朝鮮を含む大型日本地図もあった。飾ってあるものを見るだけで楽しかった。ご主人は静かに古地図の修復をされていた。折れ目のところなど色がはげた箇所に、岩絵の具と墨で慎重に筆を置いていく。一日中これをされているようで、楽しいだろうなと思った。拝見しているといろんな話をしてくださった。古地図で有名な人文社なども、ここに地図を借りに来るそうだ。
それからあっという間に15年たち、2010年9月11日。
近くに家を探しに来たときお邪魔して、ご主人と店の中を写真に撮らせてもらった。
その後、翌年だったか翌々年だったか、再訪すると店が閉まっていた。
ネットで調べたら、なんと私が記念写真を撮らせてもらった3日後の9月14日に急逝されたらしい。(之潮さんのブログhttp://collegio.jp/?p=366)
今、古地図の看板だけ残り、鉄道マニアの店になっている。
せっかく埼玉から近くに引っ越してきたのに残念に思う。
さて道を少し戻る。
田端の高台はほんとに静かである。
この家は以前いい感じの大きな和風邸宅であったが、半分リフォームされて標札も新しくなっていた。
持ち主が変わったのだろうか。でも昔の部分が残っていてうれしかった。
次の四つ角から与楽寺坂の下り。
この家も素敵。坂に合っている。
与楽寺坂 下から
この坂は江戸切絵図にもある。
2010年9月、この坂の途中の家を買おうとした。
家の前が崖で、駅から歩いて3分とは思えないほど緑が多くて見晴らしがよかった。
家の場所を聞かれた時に「与楽寺坂です」なんて「明神下の平次」みたいでかっこいいではないか。
しかし迷い続けて、よし買おう、と決断した時はタッチの差で他の方が先に手付金を払っていた。
与楽寺坂の一つ北(西)の坂は上の坂と云う。
坂の上に芥川龍之介が住んでいた。
2011年4月、この坂の途中に緑に包まれた素敵な家があった。
家の乗っている石垣には祠があって、西向子育地蔵という石仏が祀られていた。雨の日など今にも芥川が石段の上から降りてくるようで、山手線の駅から3分にこんな環境とは信じられなかった。
2011年4月、この坂の途中に緑に包まれた素敵な家があった。
家の乗っている石垣には祠があって、西向子育地蔵という石仏が祀られていた。雨の日など今にも芥川が石段の上から降りてくるようで、山手線の駅から3分にこんな環境とは信じられなかった。
2011.4
2011.4
しかし、家が古く、それを建て替えるとなるとセットバックで石垣(祠)を壊さねばならない。また道が狭くて重機が入りにくく、斜面にたつ基礎をやり直すには相当金がかかることで購入を断念した。
この日2/25行ってみると、その家は壊されアパートが作られている最中だった。
当時2011年の写真と、2017年この日の写真を合せて載せる。
坂の上から
2011.4
2017.2
ずいぶん緑が減ってしまった。下から見ると
2011
2017
祠は破壊されていた。
素敵な家だったのにな~
「東京23区の坂道」というサイトの写真は、そんなに古くはないのだが、2011年よりもっと道が狭い。左側の家が建て替えられたときにセットバックしたのだろうか。
かつての田端文士村も赤紙仁王から北側は、ずいぶんと乱暴な区画整理で全く面影がなくなってしまった。
2011年4月に行ったとき、驚きと無念さを感じて撮った写真を1枚載せる。
板谷波山のご子孫の家が破壊されている最中で、大きな切り株と敷地の基礎だけ写っている。今から40年前、よく田端からこの前を歩いて本駒込まで帰った。あの頃の風景はもう記憶の中にしかない。
2011.4 板谷邸破壊中
向こうはポプラクラブ跡にできた保育園
しかし動坂~田端駅の大通りから南側は(与楽寺坂、上の坂を含め)まだ昔の雰囲気が残っている。
2017年のこの日撮った写真を次に3枚示す。
下の写真は上の坂近く、芥川龍之介が結婚披露宴をしたという天然自笑軒跡。
今は田端の地主さんと同じ苗字の表札がかかっている。
与楽寺付近は坂がとくにいい。
私道かもしれないが、こんな素敵なところが山手線の駅から3,4分にある。
ずっと残ってほしい。
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