2024年11月27日水曜日

イソフラボンとアントシアニン、カテキンの嘘


2024₋11₋18
ニンジン収穫
初めて植えた秋冬ジャガイモに日が当たらないので抜いた。

人参の色はβカロテン(カロテノイド系、ビタミンA)である。
かつてはこの物質も緑黄色野菜とかで健康志向の人にもてはやされたが、最近はアントシアニンとかイソフラボンのほうが世間では有名かもしれない。流行というのはそういうものである。その風潮から人参の葉にもフラボノイドが含まれると言われるようになった(食べてもまずいけど)

フラボノイドとアントシアニンの関係について分かっていない人が多いので解説しておく。
アントシアニンはナスや黒豆などの色素として一般には知られているが、これとフラボノイド系色素、はてはポリフェノールはどういう関係か。

まず、ポリフェノールというのは文字通り、ただフェノール系水酸基が多数ある化合物を言う。だから世の中には無数にある。色の有無、化学構造の基本骨格、ましてや健康に良いとか悪いとかは関係なく、当然、発がん物質や毒物も含まれる。
そのポリフェノールの中にフラボノイドも含まれる。当然フラボノイド、イソフラボンも無数にあり、その中には発がん物質や毒物もあるだろう。

フラボノイドとは、ふつう
ABCの3環構造のフラバン骨格を持つ化合物の総称である。
AC環はクロマン(=ベンゾジヒドロピラン)で、その2位にフェニル基(B環)がついている。つまりフラバンは2-フェニルクロマンである。
このフラバン自体は天然にはほとんど存在しないが、この骨格の周りに水酸基(OH)を多くもつ化合物(すなわちポリフェノール)は植物体に多数存在する。

カテキン

例えば緑茶に含まれるカテキンは、同時にポリフェノールであり、フラボノイドであり、フラバン誘導体でもある。(カテキンは上のB環の2つのOHがオルト位にある。神経伝達物質カテコールアミンのカテコールも、ベンゼン環に2つのOHがオルト位についたものだが、カテキンの乾留で得られたから名付けられた)

また、赤ワインの色素成分、つまりブドウの果皮に含まれるシアニジンは、アントシアニン(正確にはアントシアニジン類)の一つとして有名であるが、同時にポリフェノールであり、フラボノイドであり、フラバン誘導体でもある。カテキンと似ているが、C環が酸化されているからカテキンではない。
シアニジン
(アントシアニンはOHにグルコースがついた配糖体という形で植物体に存在し、糖のはずれた上記のようなアグリコンはアントシアニジンという。ブドウ果皮には、OHの数と場所が異なる別のアントシアニンも多く含まれる)

配糖体は腸管で吸収されず、加水分解されてから吸収、血中に入る。だから健康(?)効果を発揮するのはアントシアニンではなくアントシアニジンといえる。

フラボノイドをさらに分類すると、
左上から右下にZ字で(1)~(4)とすれば、
フラバンの4位がケトンになったフラバノン(2)、それが脱水素されたフラボン(1)、フェニル基が2ではなく3に付いているイソフラボン(3)、C環の酸素原子の孤立電子対が二重結合に参加しているアントシアニン(4)に分けられる。

狭義のフラボノイド(flavonoids)は、フラボン類ということだから(1)の骨格である。しかし、一般にフラボノイドは上記の4つのグループ、つまり大豆で有名なイソフラボンも、紫芋で知られるアントシアニンも、すべてフラボノイド(広義)といっている。

イソフラボンは、フェニル基が2位でなく3位だからフラバン骨格ですらないが、フラボノイドに含める。そのため、近年は2つのベンゼン環(A、B)を3つの炭素でつなげたものをフラボノイドの定義とするらしい。

ちなみに私は健康食品より色素、染料が好きで、演題自由な講演を頼まれると、アントシアニンなどの色素、染料に関して話してきた。

だからフラボノイドと色について書いておく。
フラバノン類(2)は共役二重結合が途中で切れ、短いので色はない。フラボン類(1)、イソフラボン類(3)は3環全体に共役二重結合がつながっている。しかしカロテノイドと比べると短く、発色には不十分である。ところがポリフェノールだから水酸基がある。この酸素原子の孤立電子対が環の二重結合と共役しうる。とくにアルカリ性になればOHの水素原子が離れ、共役しやすい。(これはフェノールフタレインがアルカリ性で赤くなることを思えばよい)

一方、アントシアニン(4)は紫芋、黒豆、ナス、ブルーベリー、赤カブ、紫キャベツなどに含まれ、他のフラボノイドとちがって鮮やかな色を持つ。色=健康成分=アントシアニン、といった認識すらある。
これはC環のエーテル酸素原子が液性に関係なく孤立電子対を共役二重結合に参加させているからである。酸素原子が、恒久的にパイ電子を引っ張ることで、環上だけでなく遠く隔たるフェノール性OHにもおよび、それらの水素原子が離れやすく、孤立電子対が常にフラバン骨格の共役二重結合につながる。すると励起エネルギーが小さくて済み、吸収波長が紫外線より可視光線領域まで延びてくるため、色が出るのである。
2024₋11₋26
千駄木菜園の里芋。今季2回目の収穫、4株
サトイモの葉っぱにもフラボノイドが含まれている。
人参の葉にもある。
フラボノイドとかポリフェノールとか、そんな何処にでもあるような化学物質を有難がってはいけない。


さて、前置きというか、アントシアニン、イソフラボン、ポリフェノール、カテキンという、なぜか世間の誰もが知っている言葉の説明が長くなってしまったが、本題はそれではない。

これらが健康に良いという嘘についてである。

毒物摂取や暴飲暴食などは体に悪いとは思うが、血糖値低下、体重低下が健康に良いだろうか?
例えば、何かを食べ続けて体重が5キロ減ったとする。これは普通に考えたら体に良くないものを入れたと考えるべきである。たとえば、胃腸の健全な働きを妨害するような「毒」を食べたとするほうが自然である。
それが下痢とか発疹とか倦怠まで行かない程度の軽い毒ならば、やせた痩せた、と喜んでいる。その食品にイソフラボンとかアントシアニンとか含まれていれば健康食品、機能性食品として売る。また喜んで買う。しかしイソフラボンとかアントシアニンなどは(量の大小を問わなければ)あらゆる植物にある。こんなありふれたものを有難がる人々を不思議に思う。

血圧が下がったとか、血糖値が下がったとか、宣伝しているが、これには大きな問題がいくつもある。

1つは、信ぴょう性である。
こういうデータは簡単に測れるが最先端の科学でないため論文にならない。大学は研究費をもらったから試験するだけである。ところがお金をもらっていると、血糖降下が出ないと、実験がうまくいかなかったとして(実際しばしば起こる)、やりなおす。何回かやっていい結果が出ると、それを報告する。また本来そんな作用がなくとも、一回目でたまたま血糖降下が出れば、それを最終報告としてしまう。
製薬会社の新規化合物だとそんなことは許されないのだが、もともと自然物、食品であれば厚労省の規制はほとんどなく、第3者のチェックはないから、試験時の生データもきちんと管理されず、実験ノートもまともに書かれていないものが多い。

2つ目は、一般研究者すらよくやることだが論理の飛躍がある。
ポリフェノールは老化防止、美容と健康に良いという。フェノール、特にポリフェノールがラジカルなど活性酸素の消去に役立つのは事実である。そして老化は活性酸素などによるDNAの損傷が引き金という「仮説」がある。しかし、これだけのことでポリフェノールが老化防止になるだろうか? 
ポリフェノールなどラジカル消去物質など日常の食事から大量に入っている。若ワインを大量に飲んで長寿になるとは思えない。もちろん誰も実証しておらず、たんなる都合の良い主張である。

3つ目は、他の作用を全く調べていないことである。
例えば、あるアントシアニン、またはそれを含む食品がコレステロールの吸収を抑えるというデータを出したとしても、そのアントシアニンに発がん性はないか、催奇形性はないか、不整脈を起こす心配はないか、そんな試験は金がかかるから大手製薬会社でないかぎり、まったくやらない。規制当局も、もともと食品だから大丈夫だろうと免除している。しかしめったに食べなかった食材を食べ始めたら今までとは違うかもしれない。

4つ目は、情報にバイアスがかかっていること。
合成物質なら毒性がより強調され、植物成分なら良い作用がメディアに取り上げられ、それが広まる。皆健康に関心があるから、広がり方は全国民に渡り、さらに戻ってきてメディア、評論家?が迎合する。
2024₋11₋26
里芋を掘ったついでに先日伐採したイチジクの根を掘り出した。
(過去ブログ20230215 イチジクの根にびっくり
もちろん、イチジクにもフラボノイド(アントシアニン)が含まれている。

そもそも、あらゆる物質は、量が少なければ何も作用が出ず、そのうち期待される作用が出て、それを越えれば毒性が出る。だから一つの物質に良い悪いわけはなく、体に入れる量によって良くも悪くもなる。
テレビで良いと言われても、効かず、食べ過ぎれば毒である。適量が示されていても、合成物質なら含量が決まっているが、自然食品では、産地、気候によって含量は様々。
良心的?臆病?なメーカーは毒性が出ないように、「効かなくても良いから」1日使用量を少なめに設定する。飲んで効いたとすれば気のせいである。

本来、歴史的に自然界から食品として選ばれたというものは、もともと血糖降下作用とか降圧作用がほとんどないから人類が食べ続けてきたものである。だから期待する効果を得ようとしたら歴史的な分量を越えて大量に摂取しないとダメだろう。そうしたとき、普通なら現れない良くない作用も出てくるかもしれない。体にいい作用だけ出るなんて都合の良いことを期待するべきではない。

驚くべきことは専門家と思われている薬剤師とか栄養士とか医師まで、アントシアニン、イソフラボン、ポリフェノールが体にいいと言っていることである。

そもそも「体に良い」なんて言葉はおかしいと思わなくてはいけない。
あるのは血圧を下げるか上げるか、尿を減らすか増やすか、といった「作用」だけである。
その作用(体の恒常性を乱すという意味では「毒」)を使って、病気の人、具合の悪い人を治療するのであって、もともと健康な人(体が正常、最適状態を保っている人)がさらに長生きしようとか美人になろうとか思うのは無理な話である。

だいたい、アントシアニンなどポリフェノールは植物が人間の健康の為に作っているのではない。植物に考える力はない。神様が人間の長寿の為に植物に命令して作らせているわけでもない。植物は自分自身の生存、繁殖の為に合成している。そんなものが不老長寿の薬になるはずがない。

ポリフェノールなどは意識しなくとも、日常的に食事からとっている。

食品で一番大事なものは何か?
糖質であろう。これがなくなればATPをつくるため糖質の代わりに脂質、タンパク質が動員される。
糖質が悪者にされ、糖質フリー商品が出ているが、これはメーカーの販売戦略に乗せられた健康評論家と素直な消費者に支えられている。

戦前の日本人は魚や肉などあまり食べなかった。
1日必要なタンパク質80グラムは戦後アメリカ人の食生活を参考にして決めたものである。糖質は水と二酸化炭素に消費されてしまうが、タンパク質はアミノ酸に分解されてまた再利用される。脂肪酸も必要量は糖質から作ることができる。糖質は常に摂取し続けなければならない。

そもそも米・パン=糖質、肉・魚=タンパク質と思うことが間違いである。
精白ウルチ米、角形食パンにはそれぞれ、6.1、8.9%タンパク質が含まれていて(糖質は78.1、44.1%)、これは豚ロース、鶏卵のタンパク質、23.9、12.2%と比べて、桁違いに少ないというわけではない。(文科省公式サイトにある日本食品分析表)

タンパク質はアミノ酸に分解されて吸収され、体内で不要タンパク質から生成したアミノ酸と一緒になる。野菜類にはタンパク質はないものの、アミノ酸は含まれる。
これが、江戸時代、明治時代に米と野菜だけ食べていても生きていられた理由である。

ついでに発酵食品も書いておく。
これが体にいいなんて実験、研究は一つもない(やりようがない)。
発酵は堅い組織や吸収されない高分子(でんぷんやタンパク質)を微生物が分解することで、味が良くなったり、柔らかくなったりするのがメリットであり、健康には全く関係ない。

好きなものを好きなだけ食べるのが良い。
定年退職して昼からテレビを見ているといかに健康食品の宣伝が多いことか。コラーゲンやコンドロイチンをいくら飲んでもひざの痛みが消えるわけがない。
私はサントリーのおしゃれなイメージがこれで崩れた。


2024年11月18日月曜日

植物色素クリプトキサンチンとカプサンチン

 急に寒くなって来た。

11月17日、都心で24度、季節外れの陽気。
今日から寒くなっていく。
2024₋11₋18
ようやくパプリカも1つだけ色づく気配。
この肉厚、甘い大型ピーマンは、長期間畑を占領するため、今年は鉢1つと日の当たらぬ庭の端に2株だけ。

色の成分はカプサンチンcapsanthin。
我々、イオンチャネルTRPV(バニロイド受容体)研究者になじみ深いカプサイシンcapsaicin が唐辛子の辛味成分であるのに対し、カプサンチンは色の成分である。名前が似ているのは、両方ともトウガラシ属の学名Capsicumにちなむから。

構造も全く違い、前者が共役二重結合が長く続くカロテノイドであるのに対し、後者はバニロイド誘導体で色はない。

秋になって緑のクロロフィルが分解されてきたのか、カプサンチンが蓄積されてきたのか、どちらかだろう。いずれにせよ、一つの色素の化学変化で色が変わっていくわけではない。
すぐ隣は温州ミカン。
昨年217個もなった反動で今年は少ししか生っていない。

柑橘類のだいだい色の成分はβクリプトキサンチンで、これもカプサンチンと同じカロテノイドである。

甘夏も色づいてきた。
昨年56個だったが、今年もそれくらいはあるだろう。
3つ目の柑橘は不知火。
デコポンの栽培品種名であるが、発育不足か、デコはない。
2022年2月に植え、3回目の秋、今年はじめて実をつけた。
まだ緑のうちに落ちたり割れたりして、残っているのは9個しかない。
木が小さいから9個でも多いくらい。来年もっと成長することを期待している。

柑橘類にはクリプトキサンチンの他にノビレチンというフラボノイド色素も含まれているらしいが、両者の比率は知らない。
健康ブームでフラボノイドという単語が世間では実力以上に取り上げられている。

そもそも植物の色は多くの色素が混じったものであり、絞り汁をクロマトグラフィーで展開すれば多くの色素帯がみえる。
フラボノイド、カロテノイド、など語尾のoidは「類」という意味である。世間がありがたがるフラボノイド(アントシアニン類とフラボン類)などはクロロフィル類と同様、微量成分まで見れば多くの植物に含まれていて、「体にいい」と売り込むほうも喜んで買うほうも、どっちもどっちである。
こちらも昨年363個なった反動で少ししか生っていない。
鳥に一つ齧られてから慌ててネットを張り、それ以降の被害はない。

柿の色も、βカロテン、クリプトキサンチンなど、カロテノイドである。
この日は柿9個とった。

先日サツマイモを収穫したあと、5番畝は春キャベツ、6番畝は玉ねぎを植える予定。
今日は昨日から一転、小雨で寒いから柿を取っただけで何もせず、こたつでこれを書いた。


2024年11月9日土曜日

ラッカセイ、里芋、サツマイモを掘る


2024₋11₋06
ラッカセイがいつまでも青々して光合成しているように見えるので収穫が遅れた。
過去9回の収穫日は、
2016 10.26
2017 10.31
2018 10.29
2019 11.04
2020 11.03
2021 10.15
2022 10.11
2023 10.16
2024 11.09
年によってずいぶん違う。

2024₋11₋06
「抜いたまま畑で乾燥」と書かれているが、鳥、ネズミなどに食われそうな気がして翌日鞘をとった。
2024₋11₋08
落花生の後にはレタスとホウレンソウの予定
2024₋11₋08
ことしは従来のものに加え、オオマサリを3株だけ植えた。
豊作とは言えないが、味見、節分豆まきの分はとれた。
従来種 800グラム 3.5リットル
オオマサリ 158グラム 0.8リットル

里芋も収穫。
2024₋11₋06
9株のうち3株掘った。
種芋は昨年収穫の自家製種芋と、スーパーで買った食用芋の二種類。
番号をつけたていたが、どれがどれだか分からなくなった。

里芋はサツマイモなどと違い、掘ったらすぐ食べたほうが良いらしい。
これは腐りやすいということなのか、新鮮なほうがおいしいということなのかよく分からない。保存がきかないことが、東北地方で里芋を使った芋煮会が始まった理由という。

ま、とにかく一度に全部掘らず3株だけにした。

サトイモ過去ブログ
20240521 サトイモが発芽、サツマイモにネズミ、ジャガイモは花
20231201 里芋は名前通り古い作物か

サツマイモも掘った。
2024₋11₋07
品種はすべて紅はるか、だったような気がする。
昨年同様5,6,7番畝を使用。
2024₋11₋07
7番畝はマウンドを盛って植えたりしたが、日照など条件が違い過ぎてデータにならない。
5番畝がいちばん日当たりがよく、6番は前の家と生垣の陰、7番は柿の木の陰でいちばん日当たりが悪い。
2024₋11₋09
午前中でかけている間、次女と妻が掘ってくれた。
2024₋11₋09
5番畝 25本植えて芋がついたのが14株、3.18kg
6番畝 24本 6株 1.68kg
7番畝 18本 3株 0.67kg
つまり合計67本植えて23株にしか芋ができず、総量は5.53kgであった。

これは不作だった昨年より悪い。
サツマイモは2020年からだから5年目。
 2020年 3番畝 13本 収量測らず
 2021年 1番、5番畝など 28本 収量測らず
 2022年 5, 6, 7番畝 111本 22.3kg
 2023年 5, 6, 7番畝 77本 6.5kg
 2024年 5, 6, 7番畝 67本 5.5kg

サツマイモは連作障害がないと言われるが、来年は場所を変えてみるか。

サツマイモ過去ブログ

2024年11月5日火曜日

素人にイチジク栽培は無理

イチジクに対するあこがれのようなものがあった。
ふつうの果物にない、宗教性、歴史性が感じられる。
また長野の実家のまわりでも見なかったし、もちろん作ったことがないことも、憧れた理由の一つだ。


また、私の最も好きなパンは、チーズと乾燥イチジクの入ったパンである。
一見欠点のような甘味酸味が薄いというのも、パンだけでなく料理にも使えそうな発展性を秘めている
2022‐09‐29

初めて植えたのは2017年3月、上尾セキチューで買った苗(fig-1)。しかし実が生り始めた2020年9月、カミキリムシで枯死した。
その後、2021年6月、道灌山通りの三菱パークマンションの建設で立ち退いた人が路上に「ご自由にお持ちください」と書いた鉢を置き去りにした。しかしイチジクと思われなかったのか誰も持って行かず、数日後私が2本とも引き取った(fig-2, fig-3)。
そして2022年2月、退職前、伊奈町のコメリでまた1本苗を買った(fig-4)。

つまり1本枯れたにもかかわらず、3本も狭い庭に植えていた。
拾った苗は翌2022年の夏秋に実を付けた(上の写真)が、やはり手狭であるため、1本(fig2)を抜根した。

残った2本(fig3、fig4)のうち、拾ったほうfig-3は2023年10月にカミキリムシにやられ、一命はとりとめたが患部から上を切断したため無残な姿となった。
2023₋10₋01
イチジクfig3に巣食っていたカミキリムシの幼虫。
虫体は白くて大きい。
カミキリムシの恐ろしさは、幼虫が葉を食わず幹を食うため、木を枯らしてしまうことだ。

そして2024年、4番目のイチジクfig-4が実をつけた。
一番まともに大きな実をいくつもつけていたのに、またカミキリムシにやられた。
2024₋09₋29
イチジクfig4の幹から出る虫の糞。
ああ、またか。
ネットを見ると、糞が出ている穴に針金やピンセットを差し込み、中の虫を殺せとあったので、新しい糞が出るたびに針金を突っ込んでいた。

しかし、糞の噴出はなかなかやまない。
これらが成虫になったときが恐ろしかった。カミキリムシはイチジクだけでなく柑橘類や他の果樹も襲うという。長野でもリンゴの木にいたし、防除用の白い薬液を幹にこってり塗っている桃の木を見た記憶もある。

いま千駄木菜園にある夏ミカン、温州ミカン、育ちつつある不知火、せとか、にカミキリムシがついたら泣いてしまう。
残念だけどイチジクを諦めるしかない。

糞を見つけて1か月たった。
2024₋10₋30
これを切るのか、惜しいなあ、と切るかどうか迷いながら毎日眺めていたら、食べごろのイチジクが鳥に食われていた。
2024₋10₋30
イチジクの敵はカミキリムシだけではない。

理由は省くが、鳥からの防御はミカン、柿よりも難しい。
踏ん切りがついた。
2024₋11₋03
根元から切ろうと思って分け入ったら新しい糞が噴出されている。
ますます諦めがつた。

2024₋11₋03
最後の雄姿
向こうの夏ミカンより高く、我が家では一番背が高い。

2023₋04₋12
昨年はこんなに小さかったのに(右の塀際)、夏2回でずいぶん大きくなるものだ。
柔らかい茎でぐんと伸び、そのあと木質化する。
・・・・・・
切断した。
2024₋11₋03
切断面。真ん中に虫の穴が開いている。
乳状の樹液がにじみ出る。
この独特の匂いがカミキリムシを呼ぶのだろうか?
この匂いのないミカンなどに来ないことを願う。

いままで庭でカミキリムシの成虫は2種類、幼虫も2種類みた。
これらがイチジク限定、レッドロビン限定の種であることを願っている。

2024₋11₋03
こんなに実が生っていたのに。

2024₋11₋03
抜根。
まわりはサトイモとかラッカセイとか所狭しと植わっているので作業に気を遣う。
2024₋11₋03
糞の出ていた横穴で切断したが虫はいない。
いくら針やピンセットを刺しても殺せないわけだ。
幼虫は竪穴の奥のほうに引っ込んでいるようだ。
探すために輪切りにしていくと居た。

2024₋11₋03
レンガの幅は60mm
虫はずいぶん大きい。
いままで糞が出る横穴一つに対し、幼虫1匹いると思っていたが、この穴の数に対し2匹しかいないところから、幼虫はいくつも横穴を開けるのかもしれない。
2024₋11₋03
大きなほうは頭を切断してしまった。
長さ6センチ近くあった。

過去のイチジクブログをもう一度読んで追悼とする。

2024年11月2日土曜日

柿に防鳥ネットを張る。鳥は甘さが見えるか?

外で鳥がギャーギャー鳴いている。
またこの季節がやって来た。不思議と夏は来ない。

昨年は柿と温州ミカンをやられた。
色づいてきた柿の木に来たのだろうか?

声だけでムクドリ、ヒヨドリ、ツグミのいずれかを判断する能力はない。
2024₋10₋28 15:43
今年は残暑が長かったからか、柿はまだそれほど赤くなっていない。
15:44
しかし覗くと一番赤いものを食べられていた。
もちろん鳥は色が分かる。
さらにいえば、ヒトは色を識別する錐体が3種類(R、G、B)だが爬虫類と鳥類はRGBに加えて紫を感じる4つ目の錐体がある。
様々な色の識別は3種類で十分だと思っていたが、それはヒトの可視領域(波長360~800nm)の話で、RGBの外にある光は感知できない。鳥は4つ目の紫担当錐体で紫外領域(波長300~330nm)も見えるらしい。

(哺乳類も4種類あったが、初期の種の多くは夜行性だったため退化して2種類となった。しかしヒトは昼行性になったため、R担当錐体からG錐体を作り出した。だからRGの分離が不十分で、色盲となる人も出る)

15:45
夏ミカンは襲われていない。
色づいていないし皮が厚いからな。
実際、温州ミカンは色づくと食べられる。

とにかく柿の木をネットで覆うことにした。
1.5mx5.0m(6.0m?)を2枚縫い合わせ、さらに2つに折って1辺を縫い頭巾型にしたもの。
昨年はテグスを張ったのだが効果がなかったから、今年はすっぽり覆う。

16:08
その前に木を小さくせねばならない。徒長枝や、実のついていない枝を切った。
枝葉は、まだ甘くするのに光合成しているだろうから切りたくはないのだが。

16:22
ネットをかけようとするが思ったより難しい。
棒(園芸用支柱)で持ち上げたり引っ張ったりするのだが、うまくいかない。
腕は疲れるし、イライラするし、暗くなってくるし、もうやめたくなった。

しかしネットに紐をつけて他端を棒に結び、その棒を向こう側に放り投げ、支柱を引っ張ることでなんとかかぶせた。
17:02
下はフキ、サツマイモなどがあるのだが、もうぐちゃぐちゃに踏みつけてしまった。
それでも何とかめどをつけて、この日は終了。

2024₋10₋29
翌日、完全に覆った。
幸か不幸か、全然生っていない枝があるので、それらを包む必要はなく、またそれらはネットの抑えになった。

2024₋10₋29
一息入れて枯れかけたインゲンをみたら実が生っていた。
やはり猛暑のときは花がついても実らないのである。

2024₋10₋30
初収穫。
昨年は363個もなったが、今年はその反動で不作。50個くらいかな。
ところで甘いだろうか?

可視光線以外も見える鳥なら、わかるだろうか?

血中のグルコース濃度を赤外線で非侵襲的に見る方法がある。これは組織を透過できる1500nm より長い赤外線を照射し、グルコースで吸収された後の散乱光あるいは透過光を測るものだが、変化率は最大でも0.4%に過ぎず、鳥でも全部同じものに見えるだろう。

と、ここまで書いて糖度計というものがあることを思い出した。
2015年8月、前職のとき「子ども大学」で小学生を50人くらい引き連れて上尾の三井金属鉱業・研究所を見学した。
ここは測定装置をいろいろ持っていて、電子顕微鏡で昆虫などを見たりしたあと、みんなでみかんの糖度を測った。一人一個ずつ測って、数値が高いものと低いものを箱に分け、そのあと皆で味見すると、確かに合っていた。

糖度計も赤外線を当てて返ってくる光の減衰を見る。光は散乱することを利用し、受光機は入射光の反射に妨害されないよう斜めに置く。ここで重要なのは果物の糖度は血液の糖分よりはるかに高いことだ。
文科省公式サイト、日本食品標準成分表(2023)

血中グルコースが100㎎/100mLすなわち0.1%であるのに対し、糖度10度の果物はその100倍、全量の10%が糖分である。
食品分析表を見れば、柿は
 水分 83.1(%)
 タンパク質 0.4
 脂質 0.2
 炭水化物 15.9
(うち糖質 13.3)
 有機酸 0
 ミネラル 0.4

つまり柿の内部は、ほとんど糖分である。赤外線の吸収はほとんど糖質によるから、血糖の測定よりはるかに簡単である。

しかし鳥は赤外線を照射できないから、太陽光線の赤外線の吸収分を外から見なくてはならない。外見(すなわち可視光線の反射像)が全く同じ柿二つの、赤外線像を比較するのは、2つの波長で像を見ることになる。これはプリズムでも使わないかぎり、同じ目では不可能である。

だから赤外線が見える鳥でも甘さは検知できない。もっとも一部の鳥が見える赤外線はかなり可視光線に近い800~900nmであり、これは内部まで浸透しにくいだろう。

2024₋10₋30
ふとイチジクを見ると食われていた。

しかし、食べごろになると突つかれるところを見ると、内部の糖をみるのでなく、熟したことによる外見の変化を見ているのだろう。

それが人間の目と比べどちらが正確か興味がある。

ところで鳥は渋柿を食べるだろうか?
渋柿を外見で区別できたら大したものだ。


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