2020年4月21日火曜日

小石川、エーザイ本社の歴史

4月16日、小日向の住宅街から茗荷谷に下り、小石川台地にのぼる。
再び谷に下り、白山を越えて千駄木に戻る途中、いつも通る播磨坂ではなく吹上坂を初めて降りたらびっくりした。
突如エーザイ本社があった。
小石川とは知っていたが、こんなとこにあったのか。
2020-04-16
坂の北側、エーザイ本社

エーザイの歴史は創業者・内藤豊次が田辺元三郎商店(のちの東京田辺製薬)に在職中の昭和11年、合資会社桜ケ丘研究所を作ったことに始まる。

桜ケ丘は内藤の自宅のあった小石川指が谷町の高台、通称桜ケ丘に由来する。
指ケ谷町というのは、小石川台・本郷台・白山台地の間の谷だが、この高台とはどこか?

「第三人生のあゆみ」内藤豊次(1964)にあった。

豊次は関東大震災で焼け出され叔父の小石川に来たあと貸家を転々としていた。40歳を迎え家を持とうと小石川指が谷町に借地権付き中古住宅をかった。土地70坪、建坪20坪だったが、35坪二階建てを新築した。42歳のとき。のち底地も地主から買い取った。
指が谷町とはいえ植物園に続く高台で、もとは細川男爵の農園、年老いた桜が何本もあったとか。
昭和7年
植物園、聾唖学校の南、高台の先端、戸崎町に細川邸がある。
今のパークタワーのあたりにある松平邸は常陸府中の播磨守だろうか。

さて、合資会社桜ケ丘研究所だが、会社は神田小川町にあり、狭いので工場は常磐線三河島の300坪に建てた。
「エーザイ50年写真史」(1991)から
裏は常磐線、線路の土手だった。

その後昭和16年、埼玉本庄に日本衛材株式会社を設立、しかし戦時下の統制経済で二社とも廃業が迫られる。
海軍へのビタミンCの納入を条件に両社の合併、存続が許され、昭和19年合併、本社を内藤の自宅、小石川竹早町88番地(現在地)においた。社名は日本衛材株式会社。
豊次は才あふれエネルギッシュすぎて銅像も正面からは写せない。


合併させる前、豊次は夕飯後の散歩で指ケ谷の自宅から植物園に出て小石川の谷におり吹上坂を上がっていた。すると300坪の売地がある。将来必ず良い宅地になる。欲しくてたまらず借金して買った。しばらく放置していたのだが3,4年後に新築、指ケ谷は貸すことにした。
戦時中のことで30坪以上の家は建てられない。そこで30坪の住居と30坪の洋館、10坪の離れ、6坪の防空壕の計画で許可を得て昭和17年11月に完成した。戦後防空壕の上は社員食堂となった。

昭和18年田辺元三郎商店を退社
昭和19年、桜ケ丘研究所と日本衛材の合併
昭和20年5月25日の空襲で小石川本社、自宅は全焼。
10月、特攻隊に入り死んだと思った長男祐次が復員。
戦後の発展が始まる。

「エーザイ50年写真史」(1991)から
昭和28年(1953)、本社を新築(上の写真)。
同時に道(吹上坂)の南、久堅町がわの向かいにも研究室、独身寮などを建設した。

上の写真史の右下の写真と同じ角度で写真を撮る(下)

2020-04-16
本社の向かい側にもエーザイのビル。
かつてはここが研究所だった。

わずか4年後、1957年本社ビル完成(エーザイ50年写真史)
63年後、同じ方角から写真撮る。

竹早町側の本社ビル。2020

1965年ころ(エーザイ50年写真史)
研究所(右)を拡大。左上に播磨坂がみえる。
吹上坂左のL字型本社の裏が内藤社長宅だが、ここに1967年本社を増築する。

本社(右側)増築完成後の1968年ころ。
茗荷谷の丸ノ内線車両基地が見える。
播磨坂の桜はまだ小さい。

1979年か80年、私が4年生か修士1年のとき、ここから2キロ離れた本郷通りの雀荘。
2卓くらいでやっていたのか、1年上の先輩たちがいて就職の話をしていた。
「田辺はいいものを持っているんだが今出すとスモンの補償金で取られちゃうから隠しているんだよ」「エーザイは小石川からつくばの田舎に移るからやだな」
などと好き勝手な雑談をしていた。
エーザイの研究所がつくばに移転したのは1982年4月である。

エーザイというと、新婚旅行でボストンに行ったとき留学中だった岡野和夫君に世話になった。イオンチャネル創薬では澤田光平さん(ボートの先輩)もいる。ほかにも優秀な研究者を何人か知っていて、いい印象がある。

昨年岐阜のエーザイくすり博物館に行ったとき、創業者と小石川の関係についてしつこく質問していたところ、貴重な非売品の書籍を二冊下さった。
エーザイの人より社史は詳しくなったと思う。


別ブログ
20200420 小日向台から茗荷谷に降りる
20191030 エーザイ植物園と内藤豊次、祐次
20191028 エーザイくすり博物館でアデュカヌマブの真相が
20191218 上野・本郷、全126坂道の一覧、ランキング 

0 件のコメント:

コメントを投稿