3月8日、文京シビックセンターでのダンスの練習の帰り、少し歩いた。
こんにゃく閻魔を訪ね、堀坂の塩漬けマンションを見る。
そのままこんにゃく閻魔の裏塀にそって北に歩くと、家々の間に細い坂があった。
私道らしい。通り抜けられるようだ。
上り坂の途中で、さらに左(南)に枝分かれていた。
これは個人宅に入ってしまう。
坂の中ほどに売り出し中の空き地。
帰宅後グーグル航空写真を見たら作業所のような平屋。
google 2019年4月
屋根のトタンがさびている。
調べたら木造長屋だったらしい。
この私道の坂道のあたりは、西丸御留守居・堀大膳という旗本の屋敷だった。700石、660坪だからさほど大きくないが、南に隣接する堀坂の堀内蔵助の分家だろうか?
この坂を掘大膳坂と仮に命名しておく。
2020-03-08
その売り出し空き地に南の崖上の家がせり出していた。
いくら斜面まで自分の土地とはいえ、昨今の大雨や地震で崩れたらどうするのだろう?
大膳坂の細道を上がると六角坂の上に出た。
前川という表札。何をされている方だろう?
向かいの大関邸も大きい。
上富坂教会 創立1887 年
教会と言うと本郷の東大周辺に多い。思い出すだけでも西片、根津、弥生(聖テモテ)、弓町、元富士署前、本郷郵便局裏。
小石川も多いのだろうかと思いながら引き返す。
六角坂は江戸時代から今のように坂下でクランクになっていて、坂の西側に高家旗本2000石、六角越前守の屋敷があった。1200坪。
高家というのは幕府の儀式や典礼など司る役職につく家で、一色、今川、畠山など幕末には26家あった。忠臣蔵の吉良上野介は4200石。
google 2019年4月 マンション建設中
降りてきた坂の写真を撮ろうと振り向いてびっくり。
昔、雑誌などでよく見たネコの顔がある。
こんなところにあると思わなかった。
2020-03-08
いかにも倉庫のような、水色の鉄扉の入り口に
La maison du chat noir
chez TACHIBANA
という表札があった。
40年前、第二外国語でフランス語を習ったが、今や頭にほとんど残っていない。
東大仏文出身の立花隆は、確かフランス語の理解度は英語の3分の1くらいだとどこかに書いていた。
chezという前置詞の使い方が分からなかったのだが、つながった一文ではなく、シェ・タチバナというのは事務所の名前のようだ。
猫ビルは1991年12月、氏の自宅から歩いて3分のところに仕事場兼書庫として竣工した。
建坪27平米、地下1階、地上3階。4か所に分散している本や資料を集めたが、すぐいっぱいになってしまった。
ネコを描いた顛末は『ぼくはこんな本を読んできた』(1995)の中に妹尾河童の文章として詳しい。下絵を貼ったら、壁面がカーブしていたため目の間が開いてトローンと間抜け顔になり、慌てて狭めたとか。(このカーブの内部が階段)
この本で読んだエピソードを思いだし、本棚から探してきた。
猫ビルが竣工してすぐ、1993年、3代目のアシスタントを公募したとき。
「一般秘書業務・資料整理・集め
年齢学歴不問 主婦可 能力人柄重視 固20万 週休2日」
として朝日新聞に出した。
50通くらいだろうと思ったら翌日から速達の束がドサドサ届き500通になったとか。主婦可としたのは良質の知的労働力が家庭に眠っているからだという。
すごい経歴の人がいっぱいいて、こんな雑用に才能を使わせていいのだろうかと彼も躊躇したほど。
4人の人に選考委員に加わってもらい選んだ20人に試験と面接。
選ばれたのが佐々木千賀子氏だった。20人で唯一の高卒。
「学歴不問にしておいてよかった。ちょっとでも条件を付けたら彼女は外れていた」と。
倍率500倍。
募集にはスナップ写真数枚の同封を求めていた。いま彼女をネットで見ると容姿普通であるが、27年前は当然光っていたに違いない。
別ブログ
20200311 堀坂と違法マンションの今
20200310 こんにゃく閻魔と皮膚病の木
20191218 上野・本郷、全126坂道の一覧、ランキング
千駄木菜園 総目次
2020-03-24 追記
これを書いてから『立花隆秘書日記』佐々木千賀子(2003)を半閉鎖中の文京区図書館から借りてきて読んだ。彼女が1993年5月から1998年12月まで猫ビルで5年務めたときの出来事。立花隆の本よりずっと面白い。
・秘書選抜試験はすぐ近くの文京区シビックセンターで行われ、佐々木氏は途中でソバ屋に入って昼食したこと(どこだろう?)。
・田中角栄が死去した時は事務所で記者会見したため、猫ビルがメディアの黒塗りの車に囲まれ、六角坂の上の方まで駐車の列の先が見えなかったこと。
・曲線でできた猫ビルの上に調和しない木造の家が載っている。それは3年務めた東大先端研客員教授を終えて研究室の本を移すとき、起き場所がなくて増設したもの。
・立花氏は小柄な女性が好きだったのに、佐々木氏は170センチ以上あること。
など。
彼女が秘書だった期間は私もテレビや本で立花隆をよくみた時期に重なり、懐かしかった。
それにしても、まさか、何も考えず歩いていて猫ビルに偶然出くわすとは思わなかった。
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